なぜ陸自オスプレイを佐賀に配備? 国が進める「南西シフト」構想

2025/07/09 20:30 

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 防衛省は9日、陸上自衛隊の輸送機V22オスプレイの正式配備先となる佐賀駐屯地(佐賀市)を開設し、機体の移駐を始めた。木更津駐屯地(千葉県)に暫定配備していた全17機を8月中旬までに順次移駐する。海洋進出を強める中国を念頭に九州・南西諸島の防衛力を強化する「南西シフト」の一環として計画され、5年間の暫定配備など曲折を経て正式配備に至った。

 最初の配備機は同日午前10時22分、有明海に面した佐賀空港の滑走路に到着。隣接する佐賀駐屯地に移動して駐機し、陸自隊員らが出迎えた。駐屯地前では配備に反対する地元住民らが抗議の声をあげた。

 オスプレイはヘリコプターとプロペラ機の特徴を兼ね備え、速度や航続距離で大型ヘリを上回る米国製の輸送機。日本政府は2013年策定の中期防衛力整備計画で、陸自に17機を導入すると明記した。南西諸島などに部隊を機動的に展開させる役割を担い、離島防衛の専門部隊「水陸機動団」との一体運用が主に想定されている。

 南西諸島は台湾有事のような事態になれば地理的に最前線となり得る。防衛省は離島での駐屯地開設、部隊配備などに取り組んでおり、佐賀駐屯地にオスプレイを配備することで離島防衛の戦力は九州・南西諸島への集積がさらに進む。

 この日、参院選の応援で佐賀市入りした石破茂首相は演説で「日本の安全や、災害に対する救援体制が格段に上がる」と正式配備の意義を強調。「(オスプレイは)本当に役立つ。さまざまな安全対策を講じている」と理解を求めた。

 オスプレイは開発段階からトラブルや死亡事故が相次ぎ、23年11月には鹿児島県の屋久島沖で米軍機が墜落し、8人が死亡する事故が発生。陸自機も一時飛行を見合わせた。

 佐賀駐屯地への配備計画を巡っては、防衛省が水陸機動団の本部がある相浦(あいのうら)駐屯地(長崎県)から約60キロと近い佐賀空港を配備先に選定し、14年7月、空港西側に駐屯地を開設する計画を佐賀県に打診。だが安全性や有明海のノリ漁への影響が懸念され、18年8月に県が受け入れを表明した後も、漁協との協議や用地取得交渉は難航した。

 一方、20年7月に始まった木更津駐屯地への暫定配備は「5年以内を目標」として地元自治体と合意した経緯があり、期限が迫っていた。【松浦吉剛、成松秋穂、山口響】

毎日新聞

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