違法「白タク」排除せよ 訪日客増加、関西空港で取り締まり強化

2025/02/12 15:30 

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 関西国際空港の外国人旅客数が過去最高を記録する中、許可を受けずに白ナンバーの自家用車に人を乗せて有償で運送する「白タク」の横行が懸念されている。大阪・関西万博の4月13日の開幕を控え、府警は取り締まりを強化し、国土交通省近畿運輸局などは「万が一事故が起きた時に補償を受けられない可能性があり、公共交通機関を利用してほしい」と呼びかける。【中村宰和】

 春節(旧正月)の連休が始まった1月28日、府警は関空で50人態勢の集中取り締まりを実施し、疑わしい車両を見つけると、次々に停車させて調べた。

 正午前、韓国から到着した旅客の家族連れ6人を乗せた白ナンバーの黒塗りのミニバンがターミナルを出発し、対岸部と結ぶ連絡橋に向かおうとしていた。捜査員が車を止め、運転手に事情を聴いた。京都・嵐山のホテルまで2万9000円で送迎する途中だったとして、府警交通指導課は運転していた韓国籍の貿易会社員の男性(32)を道路運送法違反(有償運送行為の禁止)の疑いで現行犯逮捕した。また、府警は5日、社員に白タクをするように指示したとして、勤務先の貿易会社社長で韓国籍の男性(36)を同法違反の疑いで逮捕した。

 府警によると、運転手の社員は「社長に言われてやった」と供述しているという。社長の認否は明らかにしていない。車の所有者は社長名義で、旅客は韓国の旅行サイトを通じて予約し、関空の待ち合わせ場所を決め、料金はクレジットカードで事前に決済していたという。

 白タク行為を巡っては、訪日外国人の増加に伴って空港や観光地など全国各地で問題になっている。関空での白タクの摘発は、2022年に東京の旅行会社代表ら6人▽23年にベトナム人9人▽24年12月に中国人1人――など。摘発のハードルは高いとされる。職務質問に対し、「友人を乗せている」「親類を迎えに来た」と説明されるケースが多い。同乗者がいるだけでは立件できず、金銭の授受を確認し、有償での運送を立証しなければいけない。支払いは現金でなく、配車アプリやメッセンジャーアプリで決済するケースが多い。

 府警交通指導課の井内孝三調査官は取材に対し、「関空の白タクは減っておらず、横行させてはいけない。間もなく万博が始まる。国内外から大阪を訪れる人の安全と安心を確保するため、総力を挙げて取り締まりを強化する」と述べた。

 ◇運輸局など啓発

 近畿運輸局は関空で1月30日、府警や大阪タクシー協会、関西エアポート、府などと協力し、21人が参加して旅客や車の運転手に「白タクは違法で危険」と書かれたビラを配った。職員らが止まっている白ナンバーの車に近付くと、すぐに発進する車もあった。

 同運輸局などは白タク問題が顕在化した16年度に関空白タク対策会議を設立し、啓発を続けてきた。運輸局は白タク行為で摘発した警察から通報を受けると、調査のうえ行政処分として使用者に60日間の車両の使用停止を命じ、ナンバープレートと車検証を預かる。管内の2府4県でバスを含む白タク行為の行政処分は、18年度4件▽19年度8件▽20年度2件▽21年度0件▽22度1件▽23年度0件▽24年度4件――で、このうち関空に関連するのは6件だった。

 同運輸局自動車交通部の黒坂直樹・旅客第2課長は「安心安全な移動手段で旅行を楽しんでもらうため、違法な白タクを排除する。旅客が増えるのに比例して当然増えていくので、警察と連携し、取り締まりの強化が重要になる」と説明する。ビラを配った大阪タクシー協会の居島伸一・常務理事は「正規に働くドライバーへの影響は大きく、排除してほしい」と話した。

毎日新聞

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