「美納棺」で生前の姿、別れの時まで… 理美容師が故人にヘアメーク 静岡の大野国武さん技術習…

2025/09/05 17:00 

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 理美容師が故人にヘアメークをして送り出す納棺儀式が、県内で広がりつつある。ただ理美容師の間での認知度は低く、静岡市内で美容院を経営する大野国武さん(40)が勉強会の開催などを目的としたクラウドファンディング(CF)を行っている。「一人一人と長く付き合い、容姿へのこだわりを把握する理美容師の力が発揮できる」と周知を図る。
 理美容師が担う納棺儀式は「美納棺」などと呼ばれる。通常の納棺では、生前さまざまな理由で整えることができずに伸びた髪は後ろにまとめるなどすることが多く、生前の姿とのずれが生じる場合がある。
 一方、理美容師による納棺は写真や遺族の話を基にカットやカラー、メークだけでなく、ネイルを施すこともできる。こうしたサービスを2010年に三重県内の理容室が始め、合同会社「エンディングカットピュア」(同県)が本県でも葬儀会社と提携した事業を進めている。静岡営業所によると、県内ではスタッフ17人が年間約700件を担当している。
 大野さんがこの取り組みを知ったのは1年ほど前、常連の女性が亡くなったことがきっかけだった。女性は、12年に駿河区で美容院「ノマニカ」を開業した当初から来店。ほぼ毎月自転車で訪れ、「足を悪くして髪を切りに行けない」との連絡を受けて大野さんが迎えに行ったこともある。音信不通になり心配していたころ、女性の家族から訃報が届いた。「お世話になった人に何かできなかったか」と考えていた時に、介護施設での出張散髪をしていた縁で福祉関係者に美納棺を教えてもらった。「早く知っていれば、雑談の中で『最期は任せて』と伝えられたかもしれない」と後悔を口にする。
 同社の講習を受けて現場に立ち会い、技術を習得した。故人との思い出を聞いたり、カットやマッサージを遺族と一緒に行ったりすることで、アットホームな儀式になるという。「キャリアとして大きな可能性を感じただけでなく、お客さまに生前予約をしてもらえるくらい丁寧に仕事をしたいと思った」
 休日が少ない理美容師にとって勉強会の参加はハードルが高いといい、「受講費を抑えて間口を広げたい」とCFに踏み切った。CFは20日まで、専用サイト「CAMPFIRE」で募っている。
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