水道水消毒をAIで自動化 静岡県企業局が実証実験 「水質安定へ調整必要」ベテラン職員の知見…

2025/09/03 08:28 

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 静岡県企業局は人工知能(AI)を活用し、浄水場の上水への消毒剤注入システムの自動化に乗り出した。注入量は天候や水質に合わせた微妙な調整が必要だが、豊富な知識や技術を持つベテラン職員の大量退職が迫り、技術継承や省力化が全国的にも待ったなしの課題になっている。企業局はAIでデータを解析する先進的な取り組みを通じ、持続的な安定供給につなげることを目指す。
 「水道水の元になる川の水質にはばらつきがある。天候なども見ながら長年の経験で判断しないといけない」。県企業局西部事務所水質管理センター(磐田市)の上村慎子センター長は、適切な消毒剤の注入量を決める難しさをこう語る。
 安全な水道水を供給するには残留塩素濃度を一定にし、消毒効果を保つ必要がある。塩素は消毒や不純物の除去のために消費されるだけでなく、気温が高かったり紫外線が強かったりすると分解が進むため、消毒剤の量は水質だけでなく天候にも気を配って調整しなければならない。投入後の消毒効果の確認には数時間のタイムラグが生じ、その間の天候の変化も考慮することが求められ、長年の経験が重要になるという。
 企業局の技術職員は50代が59%を占め、間もなく大量退職の時期を迎える。ベテラン職員の経験や感覚に基づいた知見を具体的な数値や文章などとして残す必要がある。水質の検査項目の増加などで業務が多忙化する中、職員の負担軽減も課題だ。
 こうした中、同センターは2021年度、太田川から取水する新寺谷浄水場での消毒剤注入の自動化を目指し、気象や水質のデータ収集を開始。天気予報や日光照射量などのデータも補足したAIによる解析が、職員の消毒剤注入量と近似したことを確認し、23年度から実証実験を始めた。現在は天候や水質が安定している時を中心に、職員による制御と切り替えながら運用している。
 データが不十分な条件下では正確性が落ち、台風や異常気象による渇水などの珍しい条件でのデータ収集は課題。全自動化のハードルは高いが、職員による制御の補完や技術継承への貢献には手応えがあり、他の浄水場への横展開も視野に入れる。水質管理担当2年目の中島大介主査は「経験が浅くてもAIのサポートを受ければ1人で運用できるようになるかもしれない」と話した。
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