世界遺産登録から10年「韮山反射炉」 減る来場者、ピーク時の1割強に 価値発信の模索続く

2025/07/08 08:52 

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 伊豆の国市の世界遺産韮山反射炉は、8日で登録10年となる。登録以降、来場者数には陰りが見え、現状はピーク時に対して約1割強と落ち込む。市や関係団体は、国内外の観光客を呼び込んだり、教育分野での普及を実施しようとしたりするなど、文化財としての価値発信と集客増の両立への模索が続く。
 「10周年の節目を逃さず、関係団体と協力して魅力を発信したい」―。6月、市内で開かれた、反射炉の保全について検討する「韮山地区管理保全協議会」。会長の山下正行市長は来場者増への対応に意欲を示した。
 市によると、登録された2015年度の入場者数は72万人を突破したが、集客が大きく落ち込んだ新型コロナウイルス禍後も回復が弱く、24年度は9万7千人ほど。市は登録以降、反射炉にちなんだグッズ配布やキーホルダーを製作する鋳物体験教室などの施策やイベントを展開しているが、抜本的な改善には至っていない。
 市は10周年記念として、10月に反射炉に関するシンポジウムを開く予定。山下市長は「来年、市内に完成する文化財展示施設を拠点として、改めて韮山反射炉を含む市内史跡の周遊をプロモートしたい」と強調する。
 市は、韮山反射炉ガイダンスセンター内で放映している紹介映像に英語字幕を新たに加えるなど、インバウンド(訪日客)向けにも世界遺産の価値を伝えてきた。ただ、伊豆の国歴史ガイドの会の大川公会長(76)は「訪日客が増えたなどの目立った動きはない」と指摘する。
 市内学校で出前授業を実施する同会。大川会長は反射炉の教育分野での利活用について「出前授業を他の地区でも実施したい。子どもたちがガイド活動をできる取り組みがあれば、思い出に残るし将来にもつながるのでは」と求める。保存運動に取り組む市民団体「韮山反射炉を愛する会」の橋本敬之事務局長(73)は「『来て良かった』で終わってしまうところがあり、リピーターをつくるのが難しい。観光客に対し、世界遺産としての普遍的な価値をもっと見いだしてもらうための追加策が必要」と官民連携の促進に期待する。
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