「ラブレターズ」塚本さん初エッセー集 ミシンと地元浜松、哀愁と愛情を切り貼り…

2025/06/30 08:32 

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 お笑いコンビ「ラブレターズ」の塚本直毅(浜松市出身)が初のエッセー集「コントとミシン」(光文社)を出版した。相方の溜口佑太朗が新型コロナで休養中に始めた裁縫の話題のほか、地元での思い出、コントの修業時代などの哀愁と愛情を切り貼りした一冊だ。
 日大芸術学部在学中に知り合い、互いが専門にする文芸や映画、そしてコントへの考察を深めた2人。卒業後にTBS系の番組「キングオブコント」出場のためにコンビを組み、数回の決勝進出を経た2024年に王座に輝いた。
 お笑いでの快挙による書籍化決定と思われるようだが「優勝する前から準備は進んでいて」と塚本。趣味の裁縫を取り上げていたYouTubeチャンネル「塚本ミシン」に関心を示した出版社からの依頼で話は動き始めたという。
 塚本がミシンを始めたのは22年。新型コロナで溜口が仕事を休む10日間に、さて何をしようかと思いついたのがミシンだった。洋服には人並みの興味しかなかったが「そんな自分だからこそお笑い的に面白いかなと思って手を出した。サイズが合わなくなったTシャツを一気に33着もリメークするほどはまった」。妻の出産に重なったことから、その後もマタニティードレスや子ども服も作るように。お笑いの先輩「ラバーガール」の飛永翼=掛川市出身=の勧めで活動の配信に乗り出した。
 動画は作業場の雰囲気やリメークの様子の他、依頼を持ち込む芸人仲間とのやりとりも見られる。仕上がりのポイントを明かす解説は細かく、語り口は折り目正しい。
 その結果として世に出たエッセー集。溜口は「本を書きたいと言っていたので自分もうれしかった。そのスタートがミシンというのも塚本さんらしい」と優しい視線を送る。作品の写真メインで走り出した構成は、打ち合わせを重ねるうちにミシンにとどまらない内容になった。
 家族、先輩、バイト。「エピソードはたくさんあって、ミシンから離れてはまた戻るように意識して書いた」25編。浜松北高時代に県で10位に入ったというテニスは、芸大系の大学の大会でも単複3連覇の腕前だ。はままつフラワーパークでのバイトの挿話には苦みを伴った哀愁が漂う。
 浜松市の書店で開いた出版記念イベントでは、県内外のファンが見守る中で新たなチャレンジにまつわるトークを披露した。結成時は「とがったネタが中心だったので、名前だけでもかわいくした」コンビは今も“自分サイズ”の芸風を測っている。
 書籍は四六判192ページ、1650円。
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