初子祝う「ぶか凧」3年ぶり空へ 浜松・天竜区龍山町、少子化で最後 “4度目の挑戦”成功

2025/05/27 09:00 

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 浜松市天竜区龍山町瀬尻の寺尾地区に約200年伝わる、ぶか凧(たこ)で初子の誕生を祝う凧揚げが26日、3年ぶりに行われた。約半世紀にわたり伝統を継承する「瀬尻ぶか凧保存会」によると、少子化や後継者問題などの理由で、同地区での初子のぶか凧揚げは今回で最後。会員らは標高450メートルの急斜面に位置する集落で、天竜川から吹く風を利用して空高く凧を揚げた。
 ぶか凧は横長の形状で、4本の竹骨や2本の糸目、弓形の竹にビニールテープなどを張って音を鳴らす「うなり」などが特徴。同地区での凧揚げは1950年代に一度途切れたが、78年に同会が結成されて再開。100枚以上の凧が揚がった時代もあったという。
 この日は、会員の坂井久司さん(74)の孫碧ちゃん(3)=愛知県在住=の健やかな成長を願い、鶴と亀が描かれた会員手作りの8畳の凧を用意した。
 一昨年は風が吹かず、昨年は大雨で凧が揚げられなかった。前日の25日にも碧ちゃんら家族や住民ら50人以上が集まったが南風に恵まれず断念していた。“4度目の挑戦”に宮沢宗男会長(79)ら会員は天竜川をじっと見つめて風を読み、タイミングを計った。宮沢会長の「いくぞー」の合図で会員の手を離れた凧は「ブオーン」という音を鳴らしながら勢いよく舞い上がった。
 孫の名前が書かれた凧を見上げた久司さんは「孫はやんちゃで、このまま元気に育ってほしい」と目尻を下げた。
 同会は来年以降、会や会員個人が所有する凧揚げを楽しむという。宮沢会長は「初凧を揚げられてほっとした。初凧揚げがなくなるのはさみしいが、今後もできる限り凧揚げの文化を地域に残していきたい」と力を込めた。
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