石破氏訪韓に「卒業旅行」と冷めた声 韓国側は市民も含め歓迎ムード

2025/09/30 21:35 

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 石破茂首相は30日、韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領と会談するため、韓国南部・釜山を訪問した。韓国政府によると、日本の首相が2国間外交でソウル以外の場所を訪問するのは21年ぶり。首相を退任する直前の外国訪問に日本国内では「卒業旅行」との冷ややかな声も出るが、韓国側では釜山の市民も含め歓迎ムードだった。

 李氏は会談冒頭、「韓国と日本は物理的に近いが、私は就任100日目で(石破)首相に3回も会った」と述べ、両首脳が6月に首脳間の交流を強化する「シャトル外交」の復活で合意したことの成果が、すでに出ていると強調した。

 韓国政府が石破氏の訪韓を歓迎する背景の一つには、トランプ米政権との関税交渉で、詰めの協議が難航していることもある。韓国側にとって首脳会談は、すでに米国側と覚書を交わしている日本側の状況を改めて確認すると同時に、日韓関係の安定ぶりを米国を含め、内外にアピールする機会でもあった。

 また、韓国の与党関係者は「石破首相が交代する前に、できるだけ日韓の友好ムードを高めておきたい」と語る。韓国で石破氏は歴史問題や対韓政策について「穏健派」として知られており、首相の交代が今後の日韓関係の「変数」になるとの見方が出ているためだ。特に有力候補とされている高市早苗前経済安全保障担当相も、小泉進次郎農相も、韓国では石破政権よりは歴史問題などで保守的な政策を取るとみられている。

 会談の開催地となった釜山では、地元メディアや市民から歓迎の声が上がった。地元紙「釜山日報」は30日付の社説で「(両首脳は)首都圏一極集中の打破や地方創生を議論する場所として釜山を選んだ」と指摘し、首脳会談での議論が「釜山アジェンダ」として注目を集めることに期待感を示した。釜山市に住む崔珍那(チェ・ジンナ)さん(64)も「交流することは良いことだ」と開催を喜んだ。

 一方、日本政府側も、会談場所の選定や歓迎行事などについて「韓国側が今回の訪問を重視している表れだ」(外務省幹部)と評価している。8月の首脳会談で合意した「共通する社会課題に関する政府間協議」もスムーズに立ち上がっている。29日には東京で両国外務省の次官級らが初の全体会合を開催。少子高齢化、地方創生、農業、防災、自殺対策の5分野でお互いの知見を情報交換する方針を確認した。

 韓国側には「石破氏が首相退任後も日本の政界の重鎮議員として、韓日関係の発展と成長に向けて積極的な役割を果たしてくれる」(魏聖洛(ウィ・ソンラク)国家安保室長)との期待感もある。ただ、日本政府関係者は「両国国民が改善基調を望む中で、(保守色の強い)高市早苗前経済安保担当相が首相になっても日韓関係は安定するのではないか」と指摘した。【釜山・日下部元美、大野航太郎】

毎日新聞

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