「避難所より健康リスク高い」 車中泊避難、支援体制に残る課題

2026/07/31 19:51 

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 熊本県で最大震度7を観測した地震の被災地では、余震への恐れに加え、厳しい暑さを避けるため、車中泊を選ぶ被災者も多い。2016年の熊本地震では、車中泊に伴う健康被害や死亡事例が報告された。

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 ◇車中泊を選択、理由は?

 県民アンケートによると、回答した避難経験者2297人のうち、最も長く過ごした避難場所は「自動車の中」が最多の47・2%に上った。避難期間は、3日未満が56・7%、3日から1週間が62・1%、1週間から1カ月が47・2%、1カ月以上が31・7%だった。

 車中泊を経験した1568人に理由を尋ねたところ、「余震が続き、車が一番安全と思った」が79・1%で最多だった。プライバシーへの不安は35・1%、子どもや介護が必要な家族がいたことを理由とした回答は15・7%。地震が続発したことで、安全性を背景に車中泊を選択する避難者が多かったことがうかがえる。

 こうした避難者の心理について、16年に現地調査した日本女子大の平田京子教授(建築防災学)は「日常的に使っている車を避難先に選ぶ気持ちは理解できるし、その方が良い場面もありえる。しかし、車は生活空間としての機能が十分ではなく、健康リスクなどの欠点があることを理解しておく必要がある」と指摘する。また、自治体が避難者の居場所を把握しにくく、支援物資や情報を届けにくいという課題もあるという。

 ◇国が手引きまとめ

 実際に、災害時の車中泊避難者への支援体制は十分とは言えないのが実情だ。

 内閣府の23年11月の全国調査では、対策に取り組む自治体は3割にとどまる。10年前の地震では車中泊避難者の健康把握が遅れ、多くの災害関連死を防げなかった。

 このため国は24年6月に防災基本計画を改め、在宅や車中泊避難者らへの支援の手引をまとめた。弾性ストッキングの配布や保健師による巡回、車中泊スペースの確保、注意喚起アプリの導入などを推奨している。

 熊本市は今年4月に車中泊避難支援のガイドラインとマニュアルを策定し、市内2カ所に計300台分の受け入れ場所を整備した。31日現在、市総合屋内プール「アクアドームくまもと」の駐車場で約40台が利用している。

 ◇車中泊への対応よりも…

 一方で、避難者情報を管理する支援システムの導入は間に合わず、指定場所以外での車中泊避難者の健康状態の把握は依然として難しいという。

 新潟県では、手引より前の22年6月に「クルマで避難生活するときのリスクとソナエ」と題したパンフレットを準備した。新型コロナウイルス禍で感染リスクを懸念する住民も増えると見込んだことなどがきっかけだ。

 表紙には安全のための三つのポイントを記し、特にエコノミークラス症候群の予防につなげるチェックリストや「4、5時間ごとに歩く」「足を高くして寝る」など実践しやすい対処方法を紹介している。

 県防災企画課の担当者は「首都圏に比べて新潟は車社会。車中泊避難は体調悪化のリスクもあるため推奨するわけではないが、一読するだけで情報を入手しやすいと思う」と説明する。

 平田教授は「避難所は公共施設が指定され、生活の場として快適ではないかもしれないが、車よりは健康リスクが少ない。今回の地震は真夏のため、車の燃料切れによって熱中症リスクが非常に高まる。車中泊への対応も大切だが、同時に入浴や流せるトイレ、電源、プライバシーに配慮した寝る場所を整えることが、避難所を選ぶ動機付けになる」と語る。【渡辺諒、小坂春乃、黒澤敬太郎】

毎日新聞

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