「出版社がレイシズムとは」 作家・深沢潮さんが新潮社に謝罪求める

2025/08/04 21:38 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 新潮社の週刊誌「週刊新潮」に掲載されたコラムが外国にルーツのある人に対する差別的な内容だったとして、コラムで名前を挙げられた作家の深沢潮さん(59)が4日、東京都内で記者会見し、同社に謝罪を求めた。深沢さんは「世界文学の一端を担っていくはずの出版社が、レイシズム(人種主義)を放つとはどういうことか。今こそ立ち止まって考えてほしい」と抗議。新潮社は同日、ホームページに「深沢潮様の心を傷つけ、多大な精神的苦痛を負わせてしまった」とする「おわび」をアップした。

 コラムの筆者は元産経新聞記者の高山正之氏。7月31日号に掲載された連載「変見自在」で「創氏改名2・0」と題し、海外出身者が日本国籍を取得する方法などについて記した上で「日本人を装って日本を貶(おとし)める外人は排除しきれない」と持論を展開。深沢さんら著名人の名前を挙げ「日本も嫌い、日本人も嫌いは勝手だが、ならばせめて日本名を使うな」と結んでいる。

 深沢さんは新潮社に対し、コラムの問題点をまとめた上で文書での謝罪と、「週刊新潮」誌上で深沢さんが反論する機会を確保するよう求めた。深沢さんの代理人を務める佃克彦弁護士は「外国にルーツのある人が日本を批判することを敵視していると言わざるを得ない。『創氏改名』は勝手に氏名を強制しようという発想であり、度し難い人権侵害のコラムだ」と批判した。

 新潮社がアップした「おわび」の文面は「今回の出来事につきましては、出版社として自らの力量不足と責任を痛感しております」「今後は執筆の依頼をする時点および原稿を頂戴した時点で、必ず世論の変化や社会の要請について筆者に詳しくお伝えしていく所存でおります」としたうえで、深沢さんからの要望が同社に届き次第、「真摯(しんし)に対応を検討してまいります」とつづっている。

 深沢さんは2012年、新潮社が主催する「女による女のためのR―18文学賞」大賞を受賞。深沢さんは会見で「新潮社が多様性を排除し、分断をあおる方向であることが残念で仕方ない。私の行動がくさびとなり、尊い文学作品を生み出してきた本来の姿に戻ってほしい」と訴えた。【松原由佳】

毎日新聞

社会

社会一覧>

注目の情報