誤情報配信のトライ、水俣病の理解広げる教材作成へ 現地で社員研修

2025/08/04 19:55 

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 「家庭教師のトライ」の運営会社トライグループ(東京)の中学生向けのオンライン教材が、水俣病を「遺伝する」と誤った情報で配信していた問題で、同社は4日、熊本県水俣市で社員研修を実施し、水俣病への理解を広げるための新たな教材を作成する方針を明らかにした。

 この問題で、同社幹部は6月に水俣市を訪れ被害者団体に謝罪。その際、被害者団体などは正しい情報に基づく新たな教材作りを要望していた。

 研修は、同社が環境省や関係自治体向けの再発防止策として、水俣病への理解を深めるために実施することを盛り込んでいた。楠瀬大吾執行役員や教材作成の担当者ら計21人が参加。関連資料を集めた水俣病歴史考証館で学習し、地元の教員や団体が作った教材や紙芝居も閲覧した。支援施設などでは語り部や胎児性患者らの話を聴き、水俣病の歴史や患者、家族らが受けた差別偏見について学んだ。

 研修後、楠瀬氏は「深く学べたと思っている。子供たちにどういう教材が最適か、しっかり考えていいものを作っていきたい」と話した。教材の形式などは検討中という。

 考証館の運営団体の永野三智常務理事は「来ていただいた意味は確実にあった」と評価。一方で、新たな教材作成と共に同社に求めていた、広く速やかな訂正情報を周知するための記者会見の開催について回答がなく、「残念だ」とも述べた。

 誤りがあった教材は、同社の映像授業サービス「Try IT」。メチル水銀が母親から胎児に取り込まれ、生まれた子どもが発症する胎児性水俣病の事例について「遺伝」と誤って表現していた。動画投稿サイト「ユーチューブ」でも2016年から公開され、非公開となった25年5月までの再生回数は計7万回を超えた。【中村敦茂】

毎日新聞

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