版画絵巻「平和を世界に」レプリカ 原水禁大会会場に67年ぶり展示

2025/08/04 19:19 

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 1958年の第4回原水爆禁止世界大会のためにプロレタリア芸術家の鈴木賢二さん(1906~87年)が制作した版画絵巻「平和を世界に」のレプリカが4日、広島市の原水禁世界大会の会場に展示された。広島での披露は初めてで、遺族らが「被爆80年の夏に、作品に込められたメッセージを世界に届けたい」と尽力した。

 鈴木さんは栃木県出身。反戦平和を主題にした作品を多く手がけた。「平和を世界に」は40枚の連作版画を2枚のびょうぶ絵巻(幅各6メートル、縦33センチ)に仕立てた。

 戦前の庶民の暮らしぶり、兵士の出征、米軍による原爆投下と太平洋での核実験、原水禁運動の高揚までを時系列に力強く描く。58年8月、原水禁世界大会の会場だった東京・早稲田大記念会堂に展示され、各国代表約40人が反核平和のメッセージを書き込んだ。

 作品を所蔵する遺族が2023年に地元の栃木県で公開すると反響が大きく、クラウドファンディング(CF)で費用を集めて展示用の高精度なレプリカを作った。

 4日は広島県立総合体育館(広島市中区)のロビーに展示された。鈴木さんの四女の解子(ときこ)さん(79)は「広島で展示できて胸がいっぱいですが、世界の現実を見ると悲しみと怒りを覚えます。今もこの作品のメッセージが届いていないのですから」と話した。5日まで展示される。【宇城昇】

毎日新聞

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