トクリュウ対策強化 首謀者摘発へ警視庁が新司令塔組織

2025/05/22 10:04 

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 警察庁は22日、警視庁に「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)対策本部」を10月1日に新設し、トクリュウへの対策を強化する方針を明らかにした。2026年4月までに全国から約200人の捜査員を集めるなどして計約340人態勢で情報を集約・分析する司令塔の機能を持たせ、首謀者らの摘発を目指す。

 トクリュウは秘匿性の高い通信アプリを通じて緩やかに結び付いており、準暴力団も含む。特殊詐欺や闇バイト強盗、悪質リフォーム、悪質ホスト、サイバー犯罪といった違法な活動を「ビジネスモデル化」して資金を集めている。

 24年の特殊詐欺とSNS(交流サイト)型投資・ロマンス詐欺の被害額は約2000億円に達し、トクリュウが関与しているとみられる。対策強化に向け警察庁は新たな捜査態勢が必要と判断した。

 トクリュウ対策本部は、警察庁から全国の情報を得ながら捜査戦略の立案のほか、警視庁内の刑事や生活安全といった各部門への指示や調整という司令塔の役割を担う。副総監が本部長に就き、取りまとめ役として部長と同格の「対策監」を置く。

 人員は、現在の特殊詐欺対策本部(約60人)を格上げして140人に増やす。そこに警視庁以外の46道府県警から約100人を集め、来春にはさらに全国から約100人を増強する。

 全国から集まる約200人は「トクリュウ取締ターゲット捜査チーム(仮称)」として専従で、捜査の標的とすべき首謀者ら中心的人物の選定にあたる。警察庁にも全国からの情報を集める「トクリュウ情報分析室(仮称)」を新設する。

 警察は末端の実行役らを摘発しているが、最終的に犯罪で得た資金を手にする首謀者の摘発にはほぼ至っていない。部門を横断して複数の事件を分析することで、被害金の流れや指示系統を割り出したい考え。

 最大の捜査力を持つ警視庁も積極的に捜査に投入する。警視庁が管轄権を持たない広域組織犯罪についても、警察法61条の3第1項の規定に基づき、警察庁長官の指示により警視庁を参加させることも想定する。

 また、警視庁の刑事部と組織犯罪対策部を統合して「刑事部」とし、特殊詐欺やトクリュウの捜査にあたる「特別捜査課」(約250人)を新たに設ける。【山崎征克、深津誠】

毎日新聞

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