「勝訴を一緒に喜びたかった」 亡き次男と母が闘った生活保護訴訟
乗用車の利用を巡る行政の指示に従わなかったため生活保護の支給を停止したのは違法だとして、重い障害を持つ三重県鈴鹿市の母親と次男が2022年、処分の取り消しを求めて提訴。24年10月に名古屋高裁は市に処分の取り消しを命じた。だが、重病で入院していた次男は翌月、この世を去った。判決を理解できたのか。どんな思いで病床に就いていたのか――。【原諒馬】
「本当にきれいな顔をしている。この数年間、すごく頑張ってくれたね」。母親(82)は24年11月、次男(当時56歳)の最期を市内の病院で見取った。致死性不整脈だった。裁判の心労もあり同年1月から入院していたのだという。
同年3月の1審判決で津地裁が処分の取り消しなどを命じた後、病院で母親から勝訴の報を伝えられた次男は反応を示し、理解はしたようだった。しかし、高裁判決の際は既に意識が混濁している状態で、伝わったかどうかはっきりしない。25年3月、取材に応じてくれた母親は「裁判での勝訴を名古屋に行って一緒に喜びたかった」と心境を明かした。
次男は難病でつえが必要で、長い距離を歩くことが難しかった。母親も身体に障害があり、しかも高齢だ。母親によると、自宅からスーパーまで約2キロ、通院している病院までは徒歩とバス、電車を乗り継いで1時間以上かかる。次男を歩かせるのは難しかった。
そこで次男の通院時に限って車の使用を市から認められた。だが、それには条件があった。目的外使用をしていないか確認するため、運転者や経路、走行距離を記入した運転記録を提出することだ。
それはプライバシーの侵害ではないか。親子は記録の提出に抵抗を感じた。その結果、記録を提出しなかったことを理由に市は生活保護を止めた。
だが、鈴鹿市が出した条件に法的な根拠があるわけではなく、裁量によるもの。運転経路などの記載について「必要性は相当低かった」というのが24年10月の名古屋高裁の判断だった。厚生労働省は「この裁判が直接影響した訳ではない」としつつも、24年12月、自動車保有が認められている生活保護受給者について「日常生活に必要な買い物などでの使用を認める」と各自治体に通知した。
末松則子市長は25年1月の定例記者会見で、運転記録の提出を原則不要としたことを明らかにし、「現在は通知に従って日常生活での車の使用も認めている。今後も生活保護制度の下で適切に対応していく」と述べた。
次男の死を機に車を処分した母親は「障害があるのに、自動車の保有・使用に対して厳しかった。市の対応は最低限度の生活を保障する上で問題だったのでは」と疑問を呈する。
そして「高裁の判決が出るまでの2年間は長いようで短かかった。これまでの市の対応でつらい思いもした。市として柔軟な対応をとってほしかった」と振り返った。
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