袴田巌さん、賠償6億円求め国と静岡県を提訴「捜査、裁判の過程で違法」静岡地裁

2025/10/09 19:57 

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 現在の静岡市清水区で1966年に一家4人が殺害された事件で死刑判決を受け、やり直しの裁判(再審)で2024年に無罪が確定した袴田巌さん(89)が9日、捜査と裁判の過程で県警と検察、裁判所に数々の違法があったとして、国と県に約6億800万円の損害賠償を求める訴えを静岡地裁に起こした。
 袴田さん側は訴状で、捜査機関が捜査の初期段階から真相につながる事実を隠したり、証拠を捏造(ねつぞう)したりして「(袴田さんを)犯人に仕立てあげる方向でゆがめてきた」と主張。県警は長時間の取り調べで自白を強要し、再審請求審で開示された録音テープによって弁護士接見の盗聴や公判での偽証も明らかになったとした。また、検察が有罪を立証する確かな証拠がないまま起訴したこと自体が違法と捉えた。
 実験を踏まえ、袴田さんの犯行着衣とされたズボンなど「5点の衣類」は県警の捏造だと説明。この証拠を利用した検察の訴訟手続きの進行を違法と強調し、検察が再審請求審でズボンのサイズについて手持ち証拠と異なる虚偽の主張を重ねたことも指摘している。
 裁判所については、5点の衣類の捏造を見過ごしたなどと訴えた。「過失だとしても重大で、国は責任を負うべき」とし、再審請求審でも審理不尽の誤判を繰り返したと批判している。
 弁護団によると、再審無罪を巡る国家賠償の請求額としては過去最高という。死刑執行の恐怖による慰謝料を重視し、実際に精神に変調を来した事実を考慮。釈放されるまで約33年間に及んだ精神的苦痛を「1カ月あたり100万円を下ることはない」(3億9900万円)と算定している。
 提訴後の取材に対して、県警は「訴状の内容を検討した上で適切に対応していきたい」とした。最高検は「訴状が届いておらずコメントすることはない」、最高裁は「コメントは差し控える」とそれぞれ答えた。
 袴田さんは1980年に死刑判決が確定した。2023年に静岡地裁で再審公判が始まり、同地裁は24年9月、5点の衣類など三つの証拠捏造を認定して無罪判決を言い渡した。検察の上訴権放棄により、同年10月9日に無罪が確定した。
静岡新聞

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