静岡の津波警戒区域 介護・子育て施設の避難訓練実施率「5割弱」…南海トラフ「どこまで対応で…

2025/09/27 09:16 

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 津波避難体制強化を促す「津波災害警戒区域(イエローゾーン)」に指定されている県内14市町のうち、市町内の状況を把握していた9市町の約330の高齢者や子育て関連などの要配慮者施設で、法律で義務付けられている避難訓練の実施が5割弱にとどまっていることが各市町への取材で分かった。7月の津波警報発表時に事前に策定した計画に基づいて避難できた施設からも、いざ南海トラフ地震となると「対応が難しい」との声が漏れる。立地や施設形態によって対応は千差万別で、人手不足も重なり、避難の実効性の課題があらためて浮き彫りになった。
 南海トラフ地震で、2〜4メートルの津波が想定される県内の介護施設。7月下旬の津波警報では、1階の入居者約20人をストレッチャーとエレベーターを使って3階に避難させた。職員は「スムーズにできた」と振り返るが、津波到達までには2時間ほど猶予があった。南海トラフ地震では第1波が15分で到達すると予想され、停電など揺れによる被害も想定される。「限られた人員でどこまで対応できるのか。課題が多すぎる」と職員は不安を隠さない。県西部や伊豆半島の福祉施設でも避難方法を模索するが、限界を感じている施設は少なくない。
 津波防災地域づくり法に基づき、市町は区域内の要配慮者施設を地域防災計画に掲載し、施設は避難確保計画の策定や訓練の実施、報告義務がある。対象施設を精査中の東伊豆町と河津町を除いて県内の計画策定率は8割超。ただ、訓練実施は5割を下回り、3市町は状況を把握していなかった。
 静岡市では、必要事項を記入する「入力シート」を独自に作って各施設に計画の策定を促した。一方で、訓練実施は3割程度にとどまる。市危機管理課の杉村晃一主幹は「訓練方法が分からない、報告が義務だと理解していないなどの可能性がある」とみる。松崎町の担当者は人手不足や訓練に伴うサービス停止などを挙げ「施設側に訓練実施を呼びかけにくい」と話す。
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