初めての平和祈念館「言葉を失った」 浜松天竜中が”平和考える修学旅行” ハードル上がる記憶…

2025/08/06 12:35 

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 6日は戦後80年目の「広島原爆の日」。平和教育の中でも、特に原爆の被害や悲惨さについて伝える教育活動は曲がり角を迎えている。1970年代前半の第2次ベビーブームに合わせて大量採用された教員が退職期を迎え、親世代が戦争を経験していない教員の割合が増加した。被爆者の高齢化が一層進む中、教育現場からは、児童生徒が実際に被爆地を訪れる経験や、被爆体験を聞く機会がこれまで以上に大切になるとの声が上がる。
 7月中旬、浜松市中央区の天竜中。3年の寺井夕月さん(15)が、4月に修学旅行で訪れた広島市の平和記念資料館での経験を思い返した。「原爆が落とされた直後の写真は目を背けたくなるものばかりで、初めて言葉を失った」
 同校は本年度、西日本での修学旅行先として、初めて広島市を訪れた。生徒は原爆ドームを見学した後、ボランティアの案内で平和記念公園を散策。被爆者の証言を基に「原爆の絵」を描いている基町高創造表現コース(同市)の高校生との交流も行い、絵画制作に取り組む意義や、作品に込めた思いなどを尋ねた。
 広島行きは、学年主任の増田直由教諭(68)=浜松市出身=の提案で実現した。母から戦時中の経験を聞いて育った増田教諭。毎年8月6日の平和記念式典に合わせて広島を訪れるなど、平和への強い思いを持つ中で、教員による子どもへの戦争記憶の継承に課題を感じていたという。
 文部科学省が2024年に公表した22年度の学校教員統計調査では、公立小学校、公立中学校の教員の平均年齢が、それぞれ42・1歳、43歳と前回調査より低下した。増田教諭は「教員が子どもに戦争を語るのは難しくなった。広島で一歩踏み込んだ学びをすることで、生徒の心に刺さるものがあるはず」と考え、当時の校長に掛け合った。
 生徒は、修学旅行のまとめとして一人1枚新聞を制作した。小杉豪志さん(15)は「基町高の生徒は、戦争への向き合い方や見ている視点が中学生とは違った。私は絵は描けないけど、言葉で伝えていきたい」と振り返った。増田教諭は「生徒には平和を維持する大切さの視点を持ってほしい。今後の平和教育のために、若い社会科教員を育てていく必要性も感じている」と話した。
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