浜名湖伝統「えびすき漁」観光で人気 暗闇に水中ライト照らし…子どもも楽しめて夜釣りも 湖西…
湖西市新居町の浜名湖で若手漁師が運営する観光漁「えびすき漁」の体験シーズンが5月から始まり、県内外から多くの利用客が訪れている。2019年に地元漁師の黒田武大さん(35)が率いる「極漁丸」がウェブ予約のシステムを開設し、コロナ禍後に毎年利用客を増やしてきた。夜間に水中を照らし、引き潮に乗って湖面を漂うクルマエビを網ですくうという全国的に珍しい漁法が注目され、最盛期のお盆前まで週末の予約が埋まる盛況ぶり。不漁に悩む漁師の活路となっている。
◆鉄橋下に歓声響く
5月中旬の土曜夜、新居漁港を出発した13隻の遊漁船が、JR東海道線が湖を渡る3番鉄橋の下に船を並べ、暗闇の中で水中ライトをつけた。船の周囲に小魚の群れが浮かび上がり、それを狙う大きな魚影も行き交う。13組56人の釣り客は網を構えて水面を流れてくるクルマエビを狙ったり、取った小魚を餌にシーバス(スズキ)などを釣ったりした。定期的に電車や新幹線が橋を通過する音が響く中、船上からは時折「エビだ!」「釣れた!」と歓声が上がる。約2時間半の漁の後、漁港に戻った釣り客はクーラーボックスにエビや魚を詰めて持ち帰った。
◆リピーター定着も
えびすき漁体験はエビが流れる5月〜9月中旬に行い、料金は1組1〜6人で3万3千〜4万6200円(お盆期間は割り増し)。えびすきは子どもも楽しめるほか、釣り好きの人には夜釣りが好評という。船を止める場所は出港前のくじ引きで決めるが釣果は運。1日で数百匹のエビをすくえる日もあれば、ドウマンガニや天然ウナギが取れる日もある。この日、三島市から家族と訪れた年長児の大輪皆人ちゃん(6)は「エビをすくえた」と笑顔に。ハンマーヘッドと呼ばれるシュモクザメを目撃したといい、母の衣里さん(40)も「水族館みたいで貴重な体験になった」と声を弾ませた。
利用の8割は県外客で、リピーターが多いのも特徴という。19年の開始当初から毎年複数回訪れているという名古屋市の会社員栗木渉さん(31)は、「他の地域ではできない漁で中毒性がある。エビや魚がたくさん取れれば楽しいし、取れなくても再挑戦したくなる」と魅力を語った。
◆ウェブ発信武器に
浜松市出身で中学卒業後に漁師となり、他業種を経験後に再び漁師の道を選んだ黒田さん。主にアサリ漁をしていたが、深刻な不漁を機にえびすき漁に着目し、19年に極漁丸のウェブサイトを開設した。インスタグラムやユーチューブでも積極的に情報発信を行い、ユーチューバーの誘致やテレビ取材を機に知名度が拡大。20、21年はコロナ禍の落ち込みを経験したが、以降は毎年右肩上がりで利用者が増加し、24年は5〜8月の4カ月間で延べ約4千人の利用があったという。
◆後発だった観光漁
県水産・海洋技術研究所の統計によると、アサリを除く浜名湖内の主要29種の漁獲量は23年に63・4トンで、10年前の半分、15年前の4分の1以下に減少した。アサリの漁獲量は1982年をピークに増減を繰り返し、2021年には統計史上最低の100トン、23年は過去3番目に低い363トンまで減った。
湖西市新居町の90代漁師によるとえびすき漁は戦前から続く伝統漁法で、夜間に浅瀬で湖底を照らし魚やエビをもりで突く「たきや漁」とともに浜名湖で長く行われてきたという。都市部に近い浜松市中央区雄踏町では1970年代から観光向けのたきや漁が盛んになったが、旧新居町では接客を避ける漁師の気質や他の漁が順調だったことなどから、誘客が進まなかったとみられる。
極漁丸のえびすき漁に協力する漁師は新居エビスキ組合に所属する18人。契約漁師はいずれもカキ養殖やシラスウナギ漁、沿岸漁業などと並行してえびすき漁に参加している。契約漁師の笠原健太さん(36)=同町=は「採れる魚種も量もどんどん減っている中、えびすき漁で新居が盛り上がっている。若い世代の工夫が実を結び始めた」と喜ぶ。
◆多角経営にも挑戦
黒田さんは2024年に水産加工会社を立ち上げ、ふるさと納税向けの加工品製造も始めた。県内外の飲食店ともSNSなどで交流し、高級魚の直接取引や漁師飯を振る舞うイベントにも取り組む。黒田さんは「魚を取って市場に卸すだけでは漁師の生活が成り立たない時代。表に立つ苦労はあるが、お客さんの声を聞くと手応えを感じる」と語る。今後に向け、予約枠に空きがある平日の利用促進やインバウンド対応も検討しているという。
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