「静岡家具」復権へ、いざ 回遊イベントや県外出展を計画 「メッセ」中止で県組合、新たなPR…

2025/05/06 07:55 

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 出展者数の減少や市場環境の変化に伴い、本年度の開催中止が決まった家具の見本市「シズオカKAGUメッセ」。伝統的な催事の中止で主要産地としての存在感低下を懸念する声が上がる中、県家具工業組合は販路の確保に向け、新たなPR施策を模索する。有識者も「逆境を乗り越え、静岡家具認知向上の好機に」と訴える。
 本県家具製造の歴史は、江戸時代に静岡浅間神社の造営を担った木工職人などが始めた漆器作りに端を発するとされる。その後に培われた技術は西洋鏡台や茶だんす、ドレッサーなど生活様式の変遷に対応しながら先駆的製品を次々に生み出した。1951年に前身催事が始まったKAGUメッセは、新技術を披露する場として役割を果たし、91年に木製家具製品の出荷額が1800億円を超えた本県は、大川(福岡県)、旭川(北海道)、飛騨(岐阜県)と並ぶ全国屈指の産地へと成長を遂げた。
 ただ、家具を備え付けた住宅の増加に伴い静岡家具が得意の「置き家具」は需要が減少。海外産の安価な家具との価格競争なども加わり、2021年の同出荷額は約486億円に縮小した。KAGUメッセも徐々に出展者数が減り、規模縮小を余儀なくされた。
 家具業界に詳しい静岡大の横田宏樹教授は、静岡家具の強みを「分業制が確立し、『何でもできる』総合力の高さ」と評価する一方、「デザイン力の旭川、木材圧縮技術の飛騨と比べると特徴に乏しい」と指摘する。KAGUメッセ中止を「静岡が全国に誇る家具産地であることを、消費者である県民も考える機会にすべき」と強調。産官学が連携し、静岡ならではのセールスポイントを再確認する必要性を説く。
 同組合は本年度、産業観光の視点を取り入れ組合員企業の店舗や工房を訪ね回る催しや、大川や首都圏など県外の見本市への出展を計画し、産地PRを強化する。業者や一般客に洗練された技術、企画力を公開することで「シズオカ」ブランドの認知拡大を図る。岐路に立つ地場産業が復権をかけた挑戦に乗り出す。

県も支援態勢強化 昨年「振興方針」を策定
 静岡家具復権に向け、県もサポート態勢を敷く。川勝平太前知事が在任中、2027年度に完成予定の新県立中央図書館に「静岡の家具を置いたらどうか」と発言したことを契機に、24年に「静岡の家具振興方針」を初めて策定した。
 県家具工業組合トップや有識者などで委員会を構成し、産地生き残りに向けた戦略を練り始めた。25年3月に静岡家具の歴史や異業種との協業事例を紹介する「しずおかプロダクツフォーラム」を初開催するなど、持続可能な産業モデル構築へ、既存の枠組みにとらわれない販路開拓や競争力強化を目指している。
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