新富士―富士駅間結ぶ車両 2025年1月に自動運転実験へ 静岡県と富士市が連携

2024/09/17 08:41 

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 静岡県は富士市と連携して、JR新富士駅と富士駅を結ぶ車両の自動運転実証実験に取り組む。1988年に開業した新幹線駅の新富士は鉄道路線との接続がなく、在来線主要駅の富士とのアクセスが長年の地域課題。さまざまな交通手段を検討しながら実現しなかった曲折を経て、市はバス型車両の自動運転を「第1選択肢」に掲げ、新たな可能性を模索する。
 実証実験は2025年1月に予定する。運転手が乗車しながら特定の条件下で自動運転する「レベル2」で、8人乗り車両を運行。一般道を低速で走り、片道約1・8キロを12分前後で結ぶ計画だ。
 両駅間の移動手段は現在、バスとタクシーが主流。「運転手不足が深刻な問題」(市内の交通事業者)で、県と市は自動運転を公共交通網維持の有効な手段としてとらえる。
 さらに、市が将来的な可能性として視野に入れるのが、製紙会社の旧引き込み線(専用線路)などを利用した自動運転専用レーンの開設だ。民有地のため、実現への課題は多いが、交通渋滞対策としても有効になる。小長井義正市長は「専用レーンを確保できれば、安全性と定時性につながる」と強調する。
 市はこれまでJR東海に身延線の延伸による両駅の接続を要望するとともに、線路と道路の両方を乗り入れる交通システム「DMV」や、ワンコイン(500円)タクシーなどを検討してきた。特にDMVは市内を走る岳南電車との接続も視野に、07年に市内でデモ走行を実施。21年に営業運転が始まった徳島県と高知県の視察調査も行ったが、運行制限が多いことなどから、以降は具体的な検討が事実上止まっている。
 新富士駅周辺で土地区画整理事業、富士駅前では再開発事業が進み、「富士山夢の大橋」効果で外国人観光客は急増している。来年1月の実証実験は完全自動運転に向けた5段階レベルの下から2番目。「実用化のめどは立っていないのが現状」(県の担当者)だが、両駅の接続は交流人口拡大や地域活性化につながると期待される。市都市計画課の野毛史隆課長は「実証実験を貴重な機会として今後も自動運転の検討を進めていきたい」と話す。
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