「国際社会に戻れるなら…」 日本で暮らすイラン人、思いさまざま
米軍とイスラエル軍がイランへの軍事攻撃に踏みきり、イランの最高指導者ハメネイ師の死亡も伝えられる中、日本で長年暮らすイラン人からは母国の親族らの身を案じつつ、体制転換を期待する声があがった。
「3カ所に爆撃があった。今のところは大丈夫」。東京都内で居酒屋を営むイラン出身のコルドバッチェ・マンスールさん(62)のスマートフォンに、妹ファリデさん(55)から20秒ほどの音声メッセージが届いた。受信時刻は2月28日午後3時48分。ファリデさんはイランの首都テヘランで夫と娘2人と暮らしており、自宅近くに空爆があった直後に送ったとみられる。
マンスールさんの最初の返信には「既読」が付いたものの、その後は付かなくなり、電話もつながらない。「ネット回線がやられているのだろう。連絡を待つしかないが、どこにいるかもわからず、心配だ」
マンスールさんは14歳でイラン革命(1979年)を経験し「これで国が自由になる」と期待を抱いた。だが、約半世紀となる今も実現していない。それどころか核開発を巡る経済制裁が続き、「国民はあしたのパンも買えないような生活を強いられ、我慢の限界に来ていた」と明かす。
一方で「宗教が絡むと人は命を投げ出す。最高指導者を支持していた人たちが黙っているとは思えない」とマンスールさんは考え、イランの報復に伴う国民生活への影響拡大を懸念する。「私たちは平和な世界を望んでいるだけだ。米国は他のやり方があったのではないか」と訴えた。
◇「犠牲、未来につながって」
30年以上前から栃木県で貿易業を営む50代男性は28日昼ごろ、テヘランに住む親戚からテレビ電話で「攻撃が始まった。ハメネイ師の邸宅も攻撃されている」と連絡を受けた。30分ほどすると回線が不安定になり、その後は連絡が途絶えたという。
男性は11歳の時、テヘランでイラン革命を経験。学校で礼拝が義務となり、半袖や長髪は叱られ、罰せられるようになった。それまで魅力的な音楽や映画が流れていたテレビは、宗教関係の番組だけに変わった。「小さいときから自由を奪われた気持ちだった」。18歳の頃に徴兵され、80年代のイラン・イラク戦争の最前線で死と隣り合わせの経験もした。
兵役から帰ると、ペルシャじゅうたんの貿易を始め、日本とイランを行き来する生活に。20代後半で日本への定住を決めた。当時、宗教の強制などに抗議しており「イランにいると、殺されるかもしれない」と助言を受けたからだった。
「今もイラン国内では大勢の人が殺されている」と男性は話す。今年1月、反政府デモに参加した親戚も、イラン革命防衛隊に銃撃され21歳の若さで命を落としたという。男性は圧政に抗議し、日本でたびたび反政府デモに参加している。
今回の軍事攻撃では民間人の犠牲者も出ているとされる。男性は「残念に思う」と話す一方「イランには『国際社会に戻れるなら、たとえ自分が殺されても構わない』と言う人も多い。犠牲が未来につながってほしい」と受け止めた。
◇「相互理解にも悪影響」
民間交流への影響を危惧する見方もある。
イランや中央アジアを専門に主に日本人向けの個人旅行を手掛ける「ソフィア」(東京都)によると、米軍とイスラエル軍がイランを攻撃した2025年6月の「12日間戦争」以降、イラン旅行の取り扱いはゼロの状態が続く。以前は繁忙期に月15~20件のイラン旅行を扱っていたという。
川崎知代表(77)は「再び状況が緊迫し、当面はイランと日本との旅行の行き来はなくなるだろう。両国の相互理解にも悪影響を及ぼしかねない」と危機感を募らせ「国際法のルールにのっとらず『力が正義』がまかり通るのは恐ろしい」と語った。【高橋由衣、加藤昌平、岡田英】
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