行き詰まる停戦交渉、圧力強めるイスラエル ハマスに残された道は?

2025/05/19 08:27 

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 イスラエル軍が18日、パレスチナ自治区ガザ地区に対し再び大規模な地上侵攻を開始した。停戦交渉が行き詰まる中、軍事圧力を強めてイスラム組織ハマスに妥協を迫る狙いがあるとみられる。だが、ハマスとしても簡単には譲歩できない事情があり、交渉の進展は見通せないままだ。

 「我々には二つの目標がある。人質の帰還とハマスの打倒だ」。イスラエル軍のザミール参謀総長は18日、作戦の目的を改めて強調した。「人質解放の合意を進めるために柔軟性も見せる」とも述べており、交渉次第では戦闘を緩める可能性を示唆した。

 中東では13~16日、トランプ米大統領がサウジアラビアや仲介国カタールなどを訪問しており、イスラエルはトランプ氏の中東歴訪が終わるまで大規模な攻勢を控える姿勢を見せていた。だが、トランプ氏は滞在中、ガザ情勢に関して目立った発言をせず、交渉も進展しなかった。

 ロイター通信などによると、イスラエルとハマスは17日、カタールの首都ドーハで交渉を再開させたが、ハマスが恒久的な停戦を求める一方、イスラエルはハマスの非武装化やガザ地区からの追放を条件に加えるよう要求。ハマスが受け入れを拒む中、イスラエルは予告通り大規模な地上侵攻に踏み切り、圧力を強めた格好だ。

 ハマスにとっては米国に示した「善意」が裏切られた形となった。ハマスはトランプ氏の中東歴訪直前の12日、拘束していた米国籍を持つ人質のイスラエル兵1人を無条件で解放している。これまでの人質解放の際にはイスラエルが拘束中のパレスチナ人を釈放していたが、このときはそうした「見返り」もなかった。ハマスとしては、米国がイスラエルに停戦に向けた圧力を強めることを期待していたとみられる。

 イスラエル軍の地上侵攻を受け、ハマスは18日、イスラエルに向けて2発のロケット弾を発射したが、被害はなかった。ハマス側にはもはや大規模な攻撃を仕掛ける戦闘力はほとんど残っていないとみられる。

 それでもイスラエルに対する武装闘争はハマスの存在意義に関わるだけに、簡単には譲歩できない。また、ガザを離れるのも、危機的な状況にある住民を見捨てる格好となるため、受け入れがたい。ハマスにとっては、残る人質と引き換えに停戦を要求し続ける以外に、事実上の選択肢がない状況だ。【ベイルート金子淳】

毎日新聞

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