一時代築いた“ON” 王貞治さん「追いつき、追い越せって…」
輝かしいスター性で昭和のプロ野球と日本社会を照らした「ミスタープロ野球」が長い眠りに就いた。巨人で活躍した長嶋茂雄さんが3日、89歳で亡くなった。現役時代、長嶋さんとのコンビで「ON」と呼ばれ、巨人の9年連続日本一(V9)を支えたソフトバンク球団会長の王貞治さん(85)は「常に前向きで素晴らしい、いつの間にか引き込まれてしまう人だった」と振り返った。
◇寮の同部屋になった“相棒”
「連絡をもらって『えっ』というのが最初の思いだった。こういうことは誰にでも来る日なんでしょうけど、一番来てほしくない人に来ちゃったな、と」
3日夕、東京都内で取材に応じた王さんは時折、言葉を詰まらせながら、特別な絆で結ばれていた長嶋さんとの思い出を語った。
王さんは1959年、巨人に入団した。高校を卒業したばかりの青年が寮で同部屋になったのが、前年にルーキーながら本塁打、打点の2冠を獲得した長嶋さんだった。
「当時から特別な存在。でも私は鈍い人間で、寝相は悪いわ、いびきはかくわで、随分失礼なことをした。すぐに部屋替えさせられた」
やがて日本中を熱狂させることになるONコンビの活躍は、すぐに始まった。同年6月25日、東京・後楽園球場で行われた昭和天皇ご夫妻を迎えての阪神戦。この「天覧試合」は長嶋さんがサヨナラ本塁打を放ったことで知られるが、長嶋さんは五回にもソロ、王さんは七回に2ランをスタンドに放り込んだ。ONそろい踏みの一発はこの時が初めてで、以降、2人の本塁打の「共演」は106回を数えることとなる。
「野球が好きな人たちだけの世界だった中で、関心がなかった人たちも『長嶋打ったかな』というような、すごく大きな輪になった」
王さんがそう評するように、2人のスーパースターは日本中の人気を集めた。65年から日本シリーズ9連覇を成し遂げ、「巨人、大鵬、卵焼き」が子供たちの好きなものとされた。高度経済成長期の日本でプロ野球を国民的スポーツへと押し上げた。
V9期間中、王さんは9年連続本塁打王となり、打点王は長嶋さん3回、王さん6回と分け合った。
「長嶋さんがいて、やっとホームランが打てるようになって、少しずつ長嶋さんと比較されるようになって。存在感では全然かなわない。数字でしか争えないから。とにかく追いつき追い越せっていう思いでプレーしていた」
◇監督の立場で「ON対決」も
2000年には長嶋さんが巨人、王さんがダイエー(現ソフトバンク)の監督として日本シリーズで相まみえた。世紀の「ON対決」は4勝2敗で長嶋・巨人に軍配が上がった。王さんは「本当のことを言えば勝ちたかった」と懐かしんだ。
04年に長嶋さんが脳梗塞(こうそく)で倒れた際は誰よりもその身を案じた。「なぜ、あれだけ世の中のために尽くした人が、ああいう苦労を味わわなきゃいけないのか」。それでも、前向きに、懸命にリハビリに取り組む長嶋さんの姿に逆に勇気づけられた。
訃報を聞き、王さんは3日昼、長嶋さんの自宅を訪れた。道中は暗い気持ちを抱えていたが、長嶋さんの顔を見ると不思議と気持ちが晴れていったという。いつもと変わらぬ、穏やかな表情で眠る長嶋さんがそこにいた。
「ほっとした。長嶋茂雄って人が、昔と変わらずそこにいた。残念なことではあるけど、長嶋さんがそこにいたってことですごくほっとした」
ONの時代は終わったが、その功績は永久に不滅だ。改めて長嶋さんにかける言葉を聞かれた王さんはこう答えた。
「ありがとうございました、という言葉で全て表せると思います」【牧野大輔】
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