「エンゼル税制」悪用し所得税3.6億円脱税容疑 会社役員逮捕

2026/07/23 20:47 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 スタートアップ企業への投資で税制上の優遇措置が受けられる「エンゼル税制」を悪用するなどし、所得税約3億6700万円を脱税したとして、横浜地検特別刑事部は23日、会社役員の金本重徳容疑者(55)=横浜市旭区=を所得税法違反(過少申告)容疑で逮捕した。1997年の制度開始以来、エンゼル税制を巡る脱税事件の逮捕は初めて。東京国税局査察部と合同で実態解明を進める。

 エンゼル税制は、創業初期の資金繰りが厳しい企業を後押しする「エンゼル投資家」にちなんで名付けられた制度。未上場で一定の要件を満たした中小企業に投資すれば、所得の控除が受けられる。ただし、適用後の行政のチェックが限られることなどから、政府税制調査会で「租税回避に利用される可能性がある」と一部の専門家から懸念が示されていた。

 金本容疑者の逮捕容疑は、2023年分の所得約22億7600万円を隠し、所得税約3億6700万円の支払いを免れたとしている。

 関係者によると、金本容疑者は23年4月、自身が社長を務めていた焼き肉チェーン運営会社の株を別の会社に売却。売却益の約20億円を知人が経営するスタートアップ企業に投資し、エンゼル税制の適用を受けたという。しかし、スタートアップ側で資金は使われず、大半が金本容疑者が関係する会社などに還流した疑いが浮上。地検と査察部は投資に実体がなかったとみて立件に踏み切った模様だ。

 エンゼル税制は当初、投資した株式の売却時に損失が出た場合のみが優遇の対象だった。しかし、経済団体の要望を受け、03年度に投資時点の優遇措置も創設された。国が22年11月に策定した「スタートアップ育成5カ年計画」などを受け、課税の繰り延べのほか非課税の措置も追加され、対象企業の拡大や申請手続きの簡素化が進んだ。

 経済産業省によると、97~01年度の利用実績は延べ26社(投資額計約4億4000万円)だったのに対し、20~24年度は延べ1466社(投資額計約780億5900万円)と大幅に伸びた。【佐藤緑平】

毎日新聞

社会

社会一覧>

注目の情報