「核は残酷」胎内被爆の松浦さん、NPT会議に合わせ米で証言へ

2026/04/09 08:45 

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 米ニューヨークの国連本部で27日に始まる核拡散防止条約(NPT)再検討会議に合わせて、胎内被爆者で日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)代表理事の松浦秀人さん(80)=松山市=が渡米し、現地で被爆証言をする。渡米を前に会議への期待などを松浦さんに聞いた。

 ――NPT再検討会議での予定は

 会議は5月22日まで開かれ、各国政府の代表が核軍縮を巡って議論します。私は日本被団協が派遣する被爆者ら8人の代表団の一員として4月末から約1週間、ニューヨークに滞在する。会期に合わせて、国際NGOなどが核被害者の救済や地域における非核化などについて意見交換するサイドイベントを実施します。代表団は会議の傍聴やサイドイベントでの発言、原爆写真展での説明や学校などでの講演を予定しています。

 ――2024年12月に日本被団協がノーベル平和賞を受賞してから初めてのNPT再検討会議になる

 平和賞受賞のおかげで「Nihon Hidankyo」の名前が一気に知れ渡り、国内外で証言する機会が増えました。昨年の講演回数は大学や高校、図書館などで38回と、これまでと比べて桁違いに多かった。高校生からは「私たちも正しい知識を備え引き継いで、原爆の悲惨さを伝え継ぎたい」といった感想が寄せられ、手応えを感じました。フランスの平和団体からも声がかかり、昨年11月中旬から2週間、現地で中高生や自治体、教会関係者らに被爆体験を語りました。

 ――核兵器を巡る世界情勢についてどのように感じますか?

 22年に始まったロシアのウクライナ侵攻以降、核兵器が使われる気配が一段と高まっている。今年1月にはトランプ米政権が南米ベネズエラの大統領を拘束、2月にはイスラエルとともにイランを攻撃し、紛争の火種が世界で広がっている。軍事力ではなく、対話と外交による解決を訴える被爆者の声を今こそ聞いてほしい。

 ――国内での反核機運は

 平和賞受賞で被爆者の存在感が高まり、核兵器廃絶を望む人が増えているのではないか。一方で、高市早苗首相の非核三原則の見直し検討や、官邸関係者の核兵器保有発言など、政権が逆行した方向に向かっているのが不安だ。証言活動で訪れたフランスは核保有国ですが、市民自身が自国政府に対して核兵器禁止条約に加盟して核兵器をなくすよう働きかけていました。日本でも、政府が悪い方向に行くのを食い止める世論を作るために、核兵器の恐ろしさを伝え続けたい。

 ――NPT再検討会議に期待することは

 NPTは核兵器保有国に核軍縮に向けた取り組みを義務付けている。再検討会議はNPTが機能しているかを検証するため開かれるが、15年と22年の過去2回連続で決裂している。核兵器を減らす第一歩として、条約がしっかりと機能するように会議で合意を達成してほしい。

 ――会議で訴えたいことは

 私は広島への原爆投下時、母のおなかの中にいた胎内被爆者で、原爆で焼け野原になった街を直接見ていない。被爆の実相を伝えるべき立場にあるのか迷いがある時期があったが、被爆者がだんだんいなくなり、戦争を知らない世代が増え、語らないといけないと思うようになった。不安定な国際情勢だからこそ「核兵器を持たないといけないのではないか」と戸惑う声や風潮が日本にも世界にもあるかもしれない。だが、軍備を持つことで平和は決して守れません。被爆者の証言に耳を傾け、核兵器がいかに残酷で非人道的な被害をもたらすのかを、各国政府や市民に考えてほしい。【聞き手・武市智菜実】

 ◇松浦秀人さん

 1945年、愛媛県西条市生まれ。32歳の時に同県原爆被害者の会に加わり、2003年から事務局長に。07年に日本被団協の代表理事に就任した。14年の「原爆胎内被爆者全国連絡会」の結成に携わった。10年と15年のNPT再検討会議や、24年12月のノルウェー・オスロでのノーベル平和賞授賞式にも出席した。

毎日新聞

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