泊原発周辺7万人 複合災害時の受け入れは? 課題山積も迫る再稼働
原発事故の避難者6万9000人を、近隣自治体がどう安全に受け入れるのか――。
大きな課題の解決策を示せぬまま、北海道電力泊原発(北海道泊村)の再稼働に向けた動きが進んでいる。
こうした状況に、東京電力福島第1原発事故の被災者は警鐘を鳴らす。
「事故が起きれば、受け入れ先の札幌から逃げ出す市民も多いだろう。避難者の受け入れどころではない」
◇「福島と同じ思いをしてほしくない」
内閣府のワーキングチームが策定した「泊地域の緊急時対応」によると、泊原発で事故が起きた場合、原発から5キロ圏内(予防防護措置区域=PAZ)と5~30キロ圏(緊急防護措置区域=UPZ)の住民は札幌市や苫小牧市など13市町村に避難する。
だが、巨大地震や津波との複合災害で道全域が被災すれば計画の乱れは必至だ。
「福島の時は東京にも放射性物質が届いた。30キロで線を引ける問題ではない」。2011年の東日本大震災後、福島県から札幌市に移住した50代の女性は、自らが体験した未曽有の混乱と重ね表情を曇らせる。
震災直後、地震で道路は割れ、高速道路も通行止めとなって身動きがとれなかった。
原発から30キロ圏内に住む知人は避難バスに乗り遅れ、避難指示対象地域に取り残された。
女性が住む地域は避難指示の対象外だったが、放射線量は風向きや天候によって変わる。
幼い子供の被ばくが心配で自主避難したものの、一時滞在した県内の病院では「被ばくした人は来ないで」と差別を受けた。
女性は「北海道の人に福島と同じ思いをしてほしくない」と吐露する。
事故後の15年で、国などは事故対応を見直してきた。だが、泊原発の避難者を受け入れる13自治体のうち、登別市や室蘭市など7市町は原発事故を想定した地域防災計画を策定していない。
苫小牧市の担当者は「複合災害時の代替措置まで考えられていない。課題だと思うが、現時点で計画を作る予定はない」と語り、壮瞥町の担当者も「有珠山噴火が同時に起きれば受け入れができないかもしれないが、計画作りまで手が回らない」と打ち明ける。
◇「計画は実行性に欠く」
こうした中、国は3段階に分けて事故時の住民の行動を定めているが、課題は多い。
原発の電源喪失が続く場合や、漏れ出た放射性物質が一定量に達するまでは、UPZの住民はまず「屋内退避」する。
しかし道は、泊原発のある後志地方で最も規模の大きな地震で最大4440棟が全壊・半壊などの被害を受けると推計。家屋が倒壊すれば自宅での退避は不可能となる。
放射性物質の空間線量が1時間当たり20マイクロシーベルトに達すると、その地域を約1週間以内に離れる「一時移転」、500マイクロシーベルトになると数時間以内をめどとした「避難」が求められる。
ただ、原発の30キロ圏内の13町村の住民計6万9360人(25年4月時点)が指定の受け入れ先にたどり着けるかどうかは不透明だ。
大地震発生時は、後志地方の主要道路の破損により、交通網の寸断が想定される。道は住民の避難のために北海道バス協会と協定を結んでいるが、放射線量が高まった地域での運転手確保も課題だ。
一方、UPZ圏外の住民が一時移転や避難をする際の受け入れ先や、移動の支援は白紙となっている。札幌市の地域防災計画でも、市民が一時移転の対象になった場合の具体的な避難先や移動方法は明記されていない。
泊原発廃炉訴訟の原告側弁護団、市川守弘弁護士は「建物倒壊の恐れがある中で屋内退避しなければならないなど、市民が困惑する矛盾が起きかねない。計画は実効性に欠く」と懸念を示した。
北電が27年早期を目指す泊原発再稼働まで残り1年前後。宿題はこれ以上先送りできない。【後藤佳怜】
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