「おっかなくて畑仕事も…」人身被害は最多、クマ出没相次ぐ群馬

2025/12/14 08:58 

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 4月以降の群馬県内のクマの目撃・出没件数は1000件を超え、人身被害は2009年以来最多の10件に上った。被害が相次ぐ自治体では、議会の質問もクマ関連が多く聞かれた。スーパーマーケットや駅の公衆トイレにまでクマが現れ、人身被害が起きた沼田市では、市議が「おっかなくて畑仕事もままならない」などと市民の声を代弁した。

 4日の沼田市議会の一般質問。木内修一市議は「『民家近くの路上で見た』といった日常生活に直結する不安の声が後を絶たない。出没、被害が日常化しつつあるが、従来の対策だけで対応していけるのか」と尋ねた。

 市街地への出没を受け、国は鳥獣保護管理法を改正し、9月から自治体の判断で市街地での銃猟を可能とする「緊急銃猟」の制度を開始した。昭和村や川場村で発砲が実施されたが、沼田市では行われていない。

 星野稔市長は「(猟友会員がメンバーの)市鳥獣被害対策実施隊員の銃所持許可の資格が取り消される恐れがあり、住宅地での発砲への精神的ストレスによる身体への影響もある」などと答弁。市では当面、緊急銃猟を行わない方針を示した。

 10月以降、散歩中の夫妻が襲われるなど、立て続けに4件の人身被害が起きたみなかみ町。町議会で答弁に立った阿部賢一町長はクマを人里に引き寄せないよう、2026年度から柿の木の伐採に町が補助金を出す方針を明らかにした。

 クマ対策に注目が集まっているのは、県北部だけではない。前橋市は11月、柿の木の伐採1本につき1万円の奨励金を交付する事業を開始。すぐに申請が相次いで予算の上限150万円に達し、10日間で受け付けを締め切った。

 高崎市は農林課内に、クマ出没情報を受ける専用ダイヤル「高崎市クマ出没SOS緊急ダイヤル」を設置。土日や祝日も含めて24時間対応し、情報の一元化を図る。電話番号は、末尾がクマ(90)の語呂合わせになっており、027・395・9090。【庄司哲也】

 ◇25年の群馬県内の被害詳細

 4月22日 片品村戸倉    登山中に襲われ1人負傷

 8月31日 嬬恋村鎌原    渓流釣り中に襲われ1人負傷

 9月22日 みなかみ町真庭  栗拾い中に襲われ1人負傷

10月 7日 沼田市恩田町   スーパーに出没、2人負傷

   13日 みなかみ町下津  親子グマが現れ散歩中の2人負傷

   18日 みなかみ町羽場  キノコ狩り中に襲われ1人負傷

       みなかみ町高日向 犬の散歩中に襲われ1人負傷

   29日 沼田市中発知町  民家の軒先に出没、1人負傷

11月15日 藤岡市三波川   狩猟中に襲われ1人負傷

   28日 沼田市清水町   沼田駅前のトイレに現れ1人負傷

毎日新聞

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