8.15ルポ 靖国神社、「厳粛」と「喧噪」の一日
80回目の終戦の日である15日、東京・九段北の靖国神社を訪れた。記者が目にしたのは厳粛と喧噪(けんそう)が入り交じった追悼の場だった。
◇厳かな空気が一変
朝から強い日差しが照りつけていた。午前7時、最寄りの地下鉄九段下駅から地上に出ると、「払拭(ふっしょく) 東京裁判史観」などと書かれた旗や日の丸を掲げた街宣車が並んでいた。自らの主張を刷り込んだビラを配る人たちの姿もあった。
境内では、参集殿に集団で入る制服姿の自衛官たちや、特攻服姿で日章旗を手にする人たちの姿が目に飛び込んできた。夏休みのためか家族連れも多かった。
参拝者は鳥居や拝殿の前で深々と頭を下げる。人混みの騒々しさはあるものの一帯には厳かな空気が漂っていた。
午前11時過ぎ、参拝を終えた参政党の神谷宗幣代表が参集殿から姿を現すと、騒然とした雰囲気に変わった。
神谷氏は報道陣の取材に「国の指示もあったが、国のためにみんなを守るために戦い、尊い命を失った方々に感謝と追悼の気持ちを伝えたい。二度と日本が戦争の惨禍に遭わないように平和を守る政治をやりたいという思いを伝えた」と話した。
神谷氏は沖縄戦没者を追悼する「慰霊の日」の6月23日に那覇市内であった街頭演説で、日中戦争について「(日本は)中国大陸の土地なんて求めていない。日本軍が中国大陸に侵略していったのはうそだ」と言及していた。
この日も旧日本軍の中国への侵略についてや、政治家による靖国神社参拝に対して批判があることについて記者から質問の声が上がったが、周囲が遮り、神谷氏も答えなかった。
その後、衆参の国会議員18人地方議員70人と記念撮影をするために拝殿前に向かう神谷氏に参拝者から拍手が送られた。
「神谷さん応援しています」「自民党を倒してください」
日の丸のロゴが入ったTシャツを着た若い男性が「靖国に神谷来たの(気分が)上がる」と興奮気味に言った。
◇「天皇陛下、バンザーイ」
午前11時半ごろ、参拝者の列は拝殿から約500メートル離れた大鳥居付近まで延びていた。
埼玉県川越市の女性(75)は1時間かけて第二鳥居まで進んだが、あまりの列の長さに拝殿での参拝を諦めた。
女性に話を聞くと、約10年前から政治系ユーチューブ動画を見ているといい、「北朝鮮のミサイル問題で北朝鮮と自民党が裏で手を結んでいる。だから、拉致問題が解決しない。(動画で)本当のことを知った」と言った。
7月の参院選では外国人政策を掲げて日本人を優先してくれるかを投票の判断基準にしたといい、参政党や日本保守党にシンパシーを感じたという。
「戦後80年の節目と思って初めて訪れたが、予想以上に人が多い。日本の土地を買う外国から国を守る強い日本であってほしい」
正午、境内にいた参拝者が一斉に黙とうすると静まり返った。
続いて、全国戦没者追悼式での天皇陛下のおことばがリアルタイムで境内に流れた。
「戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ、過去を顧み、深い反省の上に立って、戦禍に倒れた人々に対し、心から追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります」
放送が終わると、どこからか「天皇陛下、バンザーイ」という声が上がり、少なくない参拝者が万歳をした。
「あの戦争はアジアの植民地を解放し、自衛のためだった。毎日新聞のような報道は韓国や中国にそんたくしている」
東京都内に住む男性(78)は記者にそうくぎを刺した。
◇静かに祈りささげたい
午後1時半、日本会議などでつくる実行委員会が主催する「大東亜戦争終戦80年 追悼と感謝の集い」が境内で始まった。
「君が代」斉唱の後、谷口智彦会長が「誇るに足る国を築いたと英霊に胸を張るためには私たちは道半ば。80年後も靖国の御社(みやしろ)は世界の政治、経済、軍事の指導者が訪ねて静かな祈りをささげる場として大切にされないといけない」とあいさつした。
集いが終わった午後3時過ぎには、午前中と違い、セミの鳴き声だけが聞こえる境内に戻っていた。
参拝を終えた女性(92)に声をかけた。
女性は空襲の被害拡大を防ぐための「建物疎開」で都内にあった自宅を壊し、静岡県に1年半ほど疎開した。
疎開先で空襲に遭って同級生たちと橋の下に逃れたり、疎開先の学校に若い兵士2人が訪ねて来たりした体験も聞かせてくれた。
「当時はよく理解できなかったが、あのお兄さんたちを思い出すと涙が出る。国のために戦った人たちのおかげで今の平和がある。こういう日は静かに祈りをささげたい」
西日が差し始めても本殿への列はまだ続いていた。【宮城裕也】
-
<1分で解説>ヒグマ事故続く…過去60人死亡 「アーバンベア」も
北海道でヒグマによる死傷事故が相次いでいます。過去64年間で60人が命を落としました。山菜採りや登山中だけでなく、都市部に現れる「アーバンベア」も社会問題にな…社 会 3時間前 毎日新聞
-
徴兵され記した「病床日記」など150点 振り返る桂米朝の原点
兵庫県姫路市出身の人間国宝で落語家、桂米朝さん(1925―2015年)の生誕100年を記念した特別展「桂米朝まつり 噺(はなし)家の原点」(同市主催)が、同市…社 会 3時間前 毎日新聞
-
ヒグマに襲われた男性は失血死 格闘し両脚から出血 北海道羅臼岳
北海道警は16日、斜里町の知床半島にある羅臼岳(標高1661メートル)で14日にヒグマに襲われて死亡した東京都の20代男性の死因は、全身多発外傷による失血死と…社 会 4時間前 毎日新聞
-
1286発に思いはせ 震災で被災した岩手・大槌町で鎮魂の花火
2011年3月の東日本大震災で、当時の人口の1割弱が犠牲になった岩手県大槌町で15日夜、鎮魂の花火が打ち上げられた。犠牲者数と同じ1286発の花火が夜空を彩り…社 会 4時間前 毎日新聞
-
諏訪の夏彩る湖上花火大会 音楽スターマイン導入で観衆魅了 長野
諏訪の夏の風物詩「第77回諏訪湖祭湖上花火大会」が15日夜、長野県諏訪市で行われた。戦没者の追悼と復興を願って1949(昭和24)年に始まった大会で、この日も…社 会 5時間前 毎日新聞