大阪・関西万博会場の人工島・夢洲（ゆめしま）（大阪市此花区）への唯一の鉄道ルートとなる大阪メトロ中央線は、１３日午後９時半ごろから夢洲―長田間の全線で一時運転を見合わせた。運行トラブルはお盆の万博を直撃。来場していた大勢の家族連れらが帰宅の足を失い、大きな混乱に見舞われた。

　大阪メトロは全線運転見合わせから約４０分後の午後１０時１０分ごろ、万博会場最寄りの夢洲駅と、同駅に隣接するコスモスクエア駅（大阪市住之江区）の間で折り返し運転を始めた。しかし、夢洲駅に万博の帰宅客が殺到したことから、運行を一時中断。午後１１時５０分ごろになって電車を再び動かし始めたが、夢洲駅の混雑は長引いた。

　コスモスクエア駅は万博会場からたどり着いた人たちがあふれ、タクシー乗り場にも長蛇の列ができた。

　東大阪市の主婦、上杉幸美さん（６１）は３歳と５歳の孫と義理の娘の計４人で万博を訪れた。午後９時に水上ショーを見終えて帰宅しようとしたところ、中央線が止まったことを知った。夢洲駅で乗車できるまでに３時間かかったといい、「孫も『帰られへん』と泣いていた。大変な目に遭った」と疲れ切った表情で話した。

　コスモスクエア駅では住之江公園駅（大阪市住之江区）とを結ぶ自動運転の「ニュートラム」も増発された。

　日本国際博覧会協会によると、万博会場は通常午後１０時に閉場される。しかし、夢洲駅に多くの帰宅客が集まる恐れがあったことから、駅近くの東ゲートを緊急で開放して会場内にとどまってもらう措置をとった。東ゲート付近では深夜になっても電車に乗ることができず、疲れた様子で座り込む人の姿も見られた。

　大阪市消防局によると、中央線が運転を見合わせて以降、１３日深夜までに万博会場やその周辺から２３件の救急要請があった。体調不良や熱中症の疑いを訴える内容が多いという。

　大阪メトロによると、コスモスクエア駅近くで車両に電気を送るための設備にトラブルが起きたため全線で運行を停止したといい、復旧を急いでいる。１３日午後１１時半現在、全線の運行再開のめどは立っていない。【林みづき、藤河匠、露木陽介】