原爆がダリに与えた衝撃 きのこ雲を想起する作品も 広島で特別展

2025/05/17 09:15 

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 20世紀を代表する巨匠は、核兵器の出現に衝撃を受け、恐怖を覚えていた。広島県立美術館(広島市中区)で開催中の特別展「生誕120周年 サルバドール・ダリ―天才の秘密―」の展示作品からは、その一端がうかがえる。被爆80年を迎えた広島で鑑賞できる意義深さを感じる。

 荒涼とした風景に頭のような形をしたものが3個突き出している。作品のタイトル「ビキニの3つのスフィンクス」(縦40・6センチ、横51・4センチ)から、想起できるのはきのこ雲。制作年は1947年で、米国が太平洋で盛んに核実験を繰り返していた時期だ。

 不穏な印象を与える作品のそばには、後年にダリが述懐した言葉が紹介されている。「1945年8月6日の原爆の爆発は私に大きな衝撃を与えた」「この頃に描かれた風景画の多くは、あの大爆発の知らせにより私に生じた大きな恐怖を表現している」

 今回の特別展は、シュールレアリスム(超現実主義)の代表的な画家であるダリの画業を約120点の作品でたどる。ダリは原爆の登場後は原子を題材にした作品を多く描き、そのうち数点を紹介している。担当学芸員の山下寿水さんは「ダリは反核運動に関わるようなことはありませんでしたが、核の巨大なエネルギーと圧倒的な暴力から受けた衝撃が伝わります」と語る。

 特別展は6月8日まで(会期中無休)。【宇城昇】

毎日新聞

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