浦上天主堂に鳴り合う鐘 長崎に再び 原爆で一つ破壊 米国人ら復元
長崎原爆で破壊された長崎市の旧浦上天主堂の片方の鐘が、米国のカトリック信徒らの寄付で復元され、15日に市内でお披露目された。鐘は展示などを経て、被爆80年となる8月9日の午前11時2分、もう一つの鐘と共に、長崎の街にその音を響かせる予定だ。
旧浦上天主堂は1914年に20年がかりで完成し、レンガ造りで高さ約26メートルの双塔を備えたロマネスク式大聖堂は当時「東洋一」とうたわれた。双塔には大小二つの鐘が設置され、クリスマスなどの特別な日に限って二つの鐘が同時に鳴ったという。
45年8月9日、米軍が長崎市内に原爆を投下し、爆心地の北東約500メートルの地点にあった天主堂は壊滅的な被害を受け、双塔は鐘もろとも崩れ落ちた。長崎原爆戦災誌によると、神父と信徒数十人が犠牲になった。後に、南側の塔にあった大鐘はがれきの中から奇跡的に掘り起こされ、再建した天主堂に取り付けられたが、北側の小鐘は大破し、失われたままになっていた。
寄贈を申し出たのは米ウィリアムズ大で社会学を研究するジェームズ・ノーラン・ジュニア教授(62)。祖父が原爆開発の「マンハッタン計画」に参加した医師で、原爆投下直後には調査団の一人として広島と長崎を訪れていた。ノーラン教授はそんな祖父が残した資料を基に、原爆を巡る祖父の葛藤をまとめ、日本語版の書籍を2022年に出すなど長崎に心を寄せてきた。
23年5月、別の本の執筆のため訪れた長崎で、市内に住むカトリック信徒の森内浩二郎さん(72)と出会った。森内さんは、禁教下に守った信仰を江戸末期に告白した「信徒発見」で知られる潜伏キリシタンの子孫で、被爆2世でもある。ノーラン教授に対し、浦上天主堂北側の鐘のことを伝え、「アメリカのカトリック信者が鐘を贈ってくれたらどんなに素晴らしいだろうか」と提案した。
賛同したノーラン教授は、帰国すると米国各地で講演を開催。長崎への原爆投下や被爆者の苦しみ、潜伏キリシタンの歴史や浦上天主堂の鐘の復活を目指す思いを話した。ノーラン教授によると、米国人の多くはこれらの事実をほとんど知らず、時に涙を流しながら寄付をしてくれたといい、カトリック信徒ら500人以上から現時点で約10万5000ドル(約1500万円)が集まっている。
寄付の協力者からは「戦争終結と核兵器の廃絶を願って二つの鐘が鳴り響きますように」「寄付は戦争による傷の癒やしと、世界平和へと私たちが歩んでいくためのものです」などと世界情勢に思いをはせたメッセージも寄せられた。
鐘は米中西部のミズーリ州セントルイスにある会社が製作を担当し、オランダで鋳造した。重さ317キロ、高さ66センチ、直径80・7センチの青銅製。被爆前に設置されていた小鐘とほぼ同じ大きさ、形、デザインでの復元となった。
ノーラン教授は「この贈り物の根底には長崎の人々が経験した苦しみに対する深い悲しみと和解、許し、平和への希望がある」と話すとともに、「苦難にもかかわらず信仰を守り続けてきた長崎のカトリック信者への尊敬と感謝の気持ちも込められている」と語った。
この日のお披露目をノーラン教授はオンラインで見守った。カトリック長崎大司教の中村倫明・教区長は「新しい鐘の音が響くことは、長崎や日本、アメリカ、そして全世界にとって大きな意義がある。犠牲者への祈り、平和を願う祈りの鐘として鳴り続けてほしい」と語った。また、浦上天主堂の山村憲一・主任司祭も「鐘の復活は私たちにとって過去に起こったことを良い方向に変えていく力を示してくれる」と感謝した。
復元が実現し、森内さんは「浦上は信仰への迫害と原爆の被害の二つを経験した。この苦しみを理解し、手を携えようと作られた鐘は人類の財産になる」と期待する。
森内さんは被爆者の父から生前、原爆投下直後の長崎の惨状や、道で力尽きていた女学生に父が洗礼を授けた話を幾度となく聞き、平和を願う思いを強くしてきた。また、父は浦上天主堂の鐘への思い入れもあり「二つの鐘が鳴ると荘厳かった(だった)ぞ」と話していたという。
今年で被爆から80年。「二つの鐘が鳴ることは平和を意味する。鐘の音を聞いて希望が湧いてくる、そうした心のよりどころになっていってほしい」。森内さんはそう語り、鐘が鳴り合う瞬間を心待ちにしている。【日向米華】
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