「高収入」うたう広告トラック 福岡市が調査へ 市民の苦情増加受け

2025/04/26 21:11 

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 トラックやバスに大型広告を表示して都市部を走る広告宣伝車(アドトラック)について、福岡市が実態調査に乗り出す。広告宣伝車を巡っては近年、風俗関係の広告を表示した車両などが繰り返し走行し、市民から騒音や広告内容への苦情が寄せられていた。市はこうした事態を問題視し、調査結果を踏まえて規制のあり方を検討する方針だ。

 広告宣伝車は屋外広告の一種で、商品やイベントなどの宣伝に使われているが、一部の車両の派手な色や騒音、高収入をうたう性風俗の求人サイトの広告などが各地で問題となっている。

 福岡市によると、市内に屋外広告物を設置する場合、10平方メートル以内の自家用の広告を除いて条例に基づく許可が必要だ。ただ、規制されるのは主に設置場所や安全性に関する事項で、広告内容に規制はない。また、道路運送車両法上の「使用の本拠」が市外の場合は市の条例の対象外となる。実際、福岡市には問題となっている広告宣伝車に関する許可申請は出ておらず、市は業者名や運行台数などを把握できないという。

 市に寄せられる苦情は年々増えており、2022年度は1件だったが、23年度は9件、24年度は14件に上った。騒音や広告内容に関する苦情が多く、規制を求める声もあったという。このため市は25年度予算に走行状況に関する調査費を計上。市内を走行する広告宣伝車の台数や車両ナンバー、音の有無などを調べる方針で、市の担当者は「条例や規則の改正が必要かどうかも含めて検討の材料にしたい」としている。

 他の自治体も対策に乗り出している。東京都は24年6月に規制強化に踏みきり、それまで条例の対象外だった都外ナンバーの広告宣伝車も規制対象に加え、事前審査が必要とした。また、電光表示装置で映像を映し出すなど運転者の注意力を著しく低下させる広告を禁止するなどした。名古屋市も24年7~8月に市民へのアンケートを実施し、対策を検討している。

 広告や企業リスクに詳しい桜美林大の西山守准教授(広告ビジネス)によると、広告宣伝車は以前からある広告手法だが、10年代以降はキャバクラやホストクラブ、風俗求人サイトなど風俗関係の車両が目立つようになった。広告宣伝車は低コストで高い効果が得られるのが特徴で、繁華街でも道路を走るだけで表示できる上、人が集まる場所に柔軟に移動できる。このため風俗関係の業者が目を付けたとみられる。

 西山准教授は「酒やたばこ、性的表現など未成年への配慮が必要な広告にはコマーシャルの放送時間などに一定の歯止めがあるように、風俗関係の広告にも規制が必要だ」と指摘。「日本は先進国でありながら公共空間における表現に関する意識が低い。訪日外国人も多いことを踏まえても、自治体ごとにどんな景観を作っていくべきか議論すべきだ」と話す。【平川昌範】

毎日新聞

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