「高収入」うたう広告トラックはどこへ? 福岡・天神から追った

2025/04/26 19:49 

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 派手な色彩の広告とともに同じフレーズを繰り返しながら街を走る広告宣伝車(アドトラック)。東京都や名古屋市に続き、福岡市でも問題となっている。どういうルートを走り、どこへ帰って行くのか。4月のある日、福岡市中心部に現れた車両の行方を追った。

 九州最大の繁華街、福岡市中央区の天神地区。百貨店や商業ビルが建ち並ぶエリアを南北に貫く渡辺通りに、その車両は現れた。トラックの荷台部分のほとんどがピンクを基調とした広告。女性向けの風俗求人サイトを宣伝し、繰り返し「高収入」などをうたっている。

 午後5時ごろ、通勤ラッシュで慌ただしい街の渋滞の中をゆっくりと進む車両はひときわ目立つ。観光客が珍しがってスマートフォンを向けて写真を撮ったり、バスを待つ制服姿の学生たちが指さしたりするなど周囲の関心を集めている。

 この車両が宣伝するサイトは、18歳未満や高校生の利用は「お断り」とした上で全国の性風俗店の求人情報を掲載。「稼げる」「高収入」「安心」「気軽に」などと強調して風俗の仕事探しを呼び掛けている。

 渡辺通り、明治通り、天神西通り、国体道路――。車両は天神地区の主要な通りを巡り、歓楽街・中洲を通過。歴史的街並みが残る大博通りを経てJR博多駅へ向かった。混雑した駅周辺をゆっくりと回った後は再び天神地区へ。夜の街では音と光が一層際立った。

 ◇深夜、たどり着いたのは…

 午後10時前。車両が現れたのは福岡市から10キロ近く離れた近郊のある自治体だった。天神地区を巡回していた車両と同じナンバーだが、音は出さず、静かに敷地の一角に止まる。続いて似たような広告宣伝車が次々に帰ってきた。業者の拠点のようだ。この自治体を取材すると、屋外広告物として許可申請が出ていることが分かった。移動範囲は「福岡県内一円」となっていた。

 後日、業者が電話取材に応じた。社長を名乗る男性は「私たちは世間で言う孫請け、つまり末端です。来た仕事をやるだけ。うちより上がいるので」と淡々と答えた。数年前から運転手を雇い、発注に応じて車両を走らせるのが業務という。

 派手な広告宣伝車への苦情が市民から寄せられていることについてどう感じているのか。「それは答えられない」と男性。規制が強化されると困るのではないか、との問いにこう答えた。「世の中の流れに沿うしかない。違法なことはできないので」【平川昌範】

毎日新聞

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