群馬・桐生市の生活保護費不適切対応 問題点を時系列で振り返る
群馬県桐生市が生活保護費の支給で不適切な対応をしていた問題が、2023年11月に発覚してから約1年半が経過した。25年3月に市が設置した第三者委員会が報告書を提出するが、受給者と市の訴訟は続き、解決のめどは立っていない。
問題を巡っては、1日1000円の分割支給をした上で一部未支給▽事務処理ミスによる支給遅れ▽1900本を超える認め印の保管と無断使用▽財産管理をする民間団体による分割支給▽職員による威圧的な対応――など、複数の問題点を指摘されている。
桐生市の生活保護の問題について、時系列でポイントをまとめた。
◇桐生市生活保護問題の経緯◇
◇2023年11月21日
50代男性が生活保護費を1日1000円の分割支給された上、全額を支払われていないとして、群馬司法書士会が桐生市に運用改善を求める要請書を出した。
◇2023年11月24日
桐生市が生活保護費を分割し全額払っていなかったことを不適切として、群馬県が市に改善を求めたことを明らかにした。
◇2023年11月30日
1日1000円の分割支給されていた男性とは別の50代男性が、桐生市から生活保護費を週ごとに分割で支給され、1カ月の決定額の半分程度しか支払われていなかったことが判明した。
◇2023年12月4日
桐生市は議会教育民生委員会で、22~23年度に計10人の市民に分割支給していたことを明らかにした。
◇2023年12月8日
桐生市が生活保護の支給を決定した女性に対し、市側の事務処理ミスが原因で、保護費の支給が遅れたことが、毎日新聞の取材で判明した。
◇2023年12月18日
桐生市が一連の問題について謝罪し、内部調査チームと第三者委員会を設置することを発表。保健福祉部長を異動させ、副市長が同部長を兼任するとした。
また新たに、①記録が残る18年度以降で14世帯に分割支給②受給者などの認め印1944本を保管し、86世帯の書面に無断で押印③未支給分も全額を支給したとして会計処理――していたことも明らかにした。
◇2023年12月27日
20代男性が、桐生市から民間福祉サービスを利用し財産管理を受けるように勧められていたことが、毎日新聞の取材で判明した。
◇2024年1月16日
群馬県が桐生市の特別監査を開始。
◇2024年3月27日
桐生市の生活保護制度の不適切な運用について原因究明を行う第三者委員会が初会合を開いた。
市は、生活保護費を分割支給していた14世帯のうち、基礎資料となるケース記録に分割支給について記載があったのは1世帯にとどまることを明らかにした。
◇2024年4月3日
生活保護費を分割支給された上、全額が支給されなかったとして50代と60代の男性2人が、桐生市に対して損害賠償を求める訴訟を、前橋地裁桐生支部に起こした。
◇2024年4月4日
桐生市生活保護違法事件全国調査団が、報告会を開催。受給者が市の窓口で相談員から「税金で飯を食っている自覚はあるのか」などと威圧的な対応をされたと報告した。
また、市が警察OBを生活保護担当の部署に非常勤嘱託職員として採用し、専門外の就労支援に当たらせていたとの調査結果も明らかにした。
◇2024年4月5日
桐生市生活保護違法事件全国調査団が、群馬県と市に面談。県は市町村に対する監査と、相談窓口の担当者向けの研修を見直すと約束した。
◇2024年4月12日
群馬県が作成した「生活保護のしおり」について、生活保護からの脱却を促すような記述の削除や不足していた情報を追加するなどの改訂をした。桐生市の生活保護問題を調べる全国調査団が指摘していた。
◇2024年5月24日
桐生市が設置した第三者委の2回目会合。市は、分割支給していた14世帯の保護費について手提げ金庫などで保管し、「(受給者から)私的に預かっていたお金。公金という認識はなかった」との見解を示した。
◇2024年6月14日
生活保護費の財産管理を60代男性から委任された民間団体が、2021年から保護費を分割支給し、一部を預かっていたことが、毎日新聞の取材で判明した。
◇2024年6月20日
60代男性が生活保護費を受給する前にした借金について、市からの求めで保護費から分割払いで返済していたことが、毎日新聞の取材で判明。生活保護法では一部の例外を除き、保護費を借金返済に充てることは認められていない。
◇2024年6月21日
群馬県が桐生市に対して特別監査をした結果、生活保護法など関連法の違反や不適切事例が多数確認されたとして、是正改善措置を指導したと発表した。
◇2024年7月5日
桐生市が設置した第三者委の3回目会合。市は、生活保護費を分割する受給者を決めるための基準は設けていなかったとの認識を示した。
◇2024年7月13日
80代女性が実際には受けていない親族からの資金援助が毎月あると扱われ、本来の受給額より数万円少ない生活保護費しか受け取れなかったことが、毎日新聞の取材で判明した。
◇2024年7月19日
男性2人が市に損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が、前橋地裁で開かれた。市は一部不支給があったことを認める一方、男性1人とは分割支給の合意が取れていたなどとして請求棄却を求めた。
◇2024年8月21日
桐生市が設置した第三者委の4回目会合。市の内部調査チームが職員への聞き取りと書類調査の結果を報告。①18年から23年11月末までに福祉課が保管する受給者の認め印を職員が無断で押印したケースが、これまで明らかになっていた86世帯以外にさらに10世帯あった②認め印は1948本保管され、1989年ごろには保管する箱が2~3個存在した――と述べた。
◇2024年9月2日
桐生市が生活保護の運用について是正改善策を公表。①生活保護受給の相談者が記入する「相談受付票」を改訂し申請の意思を確認する欄を新設②福祉課の担当係内で月に1回事務研究会を開催し適切な運用ができているかを確認――などを明らかにした。
◇2024年10月4日
男性2人が桐生市に損害賠償を求めた訴訟で、第2回口頭弁論が前橋地裁で開かれ、20代男性が追加提訴したことが明らかになった。
◇2024年10月7日
桐生市が設置した第三者委の5回目会合。市の内部調査チームが保健福祉部長と福祉課長を経験した元幹部職員への聞き取り結果を報告。「厳しい指導をした管理職がいた」という証言があったと明らかにした。
◇2024年11月27日
桐生市が設置した第三者委の6回目会合。受給者が民間団体に金銭管理を委託し、団体側が生活保護費を預かって分割支給をしていた問題について、市側は7件の契約が解約されたと報告した。
◇2024年12月13日
男性3人が桐生市に損害賠償を求めた裁判で、第3回口頭弁論が開かれた。市側が分割支給について同意を得たと主張するのに対し、原告側は「殺虫剤の購入にも写真を求められた」として、同意がなかったと反論した。
◇2024年12月26日
桐生市の第三者委員会は、市の生活保護行政について一般からの情報提供を求めると発表した。
◇2025年1月24日
桐生市が設置した第三者委の7回目会合。第三者委が行った現職員43人への追加アンケートについて、生活保護に関する福祉事務所の相談、指導、対応について「不適切なものがあった」と回答した職員が62%に上ったことが明らかになった。
◇2025年2月12日
桐生市が70代女性の生活保護費を支給する際に同姓の認め印を使って文書を偽造したとして、女性の代理人らが、市職員2人を有印私文書偽造・同行使などの容疑で刑事告発したと明らかにした。
◇2025年2月13日
桐生市で生活保護費の支給を担当する福祉課の職員が、22~23年ごろにかけ、受給希望者を支援していた群馬県地域生活定着支援センターの職員に対し、声高に怒鳴ったり、相談申請への同席を拒否したりするなどの不適切な言動を繰り返していたことが、毎日新聞の取材で明らかになった。
◇2025年2月18日
桐生市が警察OBを生活保護の相談員として採用するため、「刑事課などで暴力団対応経験者を希望」とのただし書きをつけて県警に紹介を依頼していたことが判明した。
◇2025年2月19日
桐生市生活保護違法事件全国調査団が、市の総務部長らと面会。調査団が「受給者が病院に行く交通費である通院移送費の支給を拒否しているのではないか」と追及した。
◇2025年3月7日
桐生市が80代女性に対し、娘から資金援助があると認定し生活保護費を減額していたことが不適切だったとして、未払い分の75万9000円を支払ったことが判明した。
◇2025年3月14日
桐生市が設置した第三者委の8回目会合。第三者委が呼びかけた情報提供に対し115件の情報が集まった。市職員を名乗り「保護係の職員による恫喝(どうかつ)、罵声は日常茶飯事で、他課職員でさえ聞くに堪えない内容だった」とする声も寄せられた。28日に報告書をまとめ、荒木恵司市長に提出することが確認された。
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