大学転職時の特許の扱いで国が初指針 「研究者に返還」選択肢に
研究者が転職する際、特許の取り扱いを確認して――。特許などの大学が保有する知的財産を巡っては、発明につなげた研究者が転職する場合について明確な取り決めがなく、両者で紛争に発展するケースがあることから、内閣府は初めて取り扱い指針を策定した。特許を「死蔵」させず、実社会での活用を進める狙いもある。これまで大学より研究者の方が立場が弱いと指摘されてきたが、「研究者本人への返還」を含め、具体的な選択肢を示した。
大学の研究者が取得した特許は、大学の内規に沿って原則として大学が持つ。だが有期雇用のために別の研究機関に転職する研究者は多い。
こうした場合の知財の扱いについて規定を設けている大学は、約3割にとどまっている。新たな職場に知財を持ち込めずに研究が続けられない事例が起きている。iPS細胞(人工多能性幹細胞)関連の特許を巡って、元理化学研究所の高橋政代氏が退職後に特許使用を求めて紛争になったケースが代表例だ。このため国に基準策定を求める声があった。
また大学が特許を利用している割合は、国の調査では、東京大や京都大でも4割弱にとどまっており、有効活用が課題だ。
内閣府が3月25日に公表した指針によると、大学や国立研究開発法人の研究者らが転職する場合に、新旧の所属先や研究者の間で、まず関係する特許やデータなどの知財の一覧を作成するとした。そうした知財がスタートアップで事業化されている場合や、新旧所属先の大学で研究を継続する場合などに、留意事項を整理した「チェックリスト」を活用する。
チェックリストでは「知財係争リスクはないか」「発明者は1人か複数か」などを新旧の所属先が確認する。その上で、大学が権利を維持するのか、研究者本人に返還するのかなどを研究者と協議した上で決める流れを定めた。
内閣府は、知財の扱いは研究の継続性や実社会での活用に大きく関わるとし、指針策定を通じてイノベーションの促進につなげる狙いだ。今後、試験的な活用やアンケートを踏まえ、必要に応じて指針を修正するという。
◇識者の評価は
研究現場の知財に詳しい成城大の山田剛志教授(会社法)は、知財を巡るトラブルや、研究の継続性が阻害されるリスクに一定の配慮を示した点に注目し、「研究者の立場にとって画期的な一歩」と評価する。
特に「研究者本人への返還」が選択肢として示された点について、「たとえば自らが発明した技術を、転職後に研究や論文発表に使えないという状況にあった研究者にとって、研究継続の可能性を広げる」と解説する。
一方、指針には法的拘束力がなく、「現場レベルでの運用には濃淡が生じる懸念がある」と指摘。指針が使われるよう、研修や相談体制を構築することが必要だとした。【松本光樹】
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