伊豆・賀茂地区の「ワーケーション施設」が苦境 コロナ収束で利用低迷、運営企業が撤退 「絶景…

2025/09/01 13:00 

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 新型コロナウイルスの流行拡大により2020年ごろから国内で普及が進んだリモートワーク。伊豆半島南部の賀茂地区では風光明媚(めいび)で温暖な地域性を生かし、働きながら余暇を過ごす「ワーケーション」が推進されてきた。一方でコロナ禍の収束とともに曲がり角を迎えている公共関連の施設もあり、対策に苦慮する自治体も出始めた。
 7月下旬、中心部から約1・5キロの下田市三丁目。目の前に大海原の絶景が広がるワーケーション向け施設で、今後の活用に向けた見学会が開かれた。この施設は元々、市と協定を結んだ三菱地所の運営でコロナ禍まっただ中の21年にオープン。ところが利用者の低迷で同社が25年7月限りで撤退。年度ごとに300〜500人の利用を見込んでいたが、140〜270人程度にとどまった。
 整備に伴う国の補助金の返還義務を避けるため、市は引き続きワーケーション関連の施設としての利用を目指す。市内には既に約30カ所の民間運営のワーケーション施設があるが、市産業振興課は「思った利用成果は得られなかったが、ワーケーションを推進する中でシンボル的な施設の存在は大きい」と説明する。8月25日現在で企業や個人からの問い合わせはあるものの、活用へ具体的な動きには至っていないという。
 松崎町の地域交流拠点「ふれあいとーふや」もワーケーション利用が伸び悩む。16年に町が中心部にイベントスペースやシェアオフィスとして整備した。定期的な教室やイベント目的で年間200件ほどの利用はあるが、ワーケーションは10件未満という。
 利用目標は特段定めていないとしているが、町企画観光課は「町への申請が必要で、ふらっと来て働きたい人には煩雑に感じるかも」と背景を推察。地元住民の利用が多く、近年は新規の利用者は「ほとんどいない」(同課)状況だ。
 「施設が乱立し、人を呼び込むにはターゲット層の明確化と設備の特色を出すことが不可欠」とは、合同会社「エレント」(下田市)代表の塚田絵玲奈さん(34)。国や場所を選ばずITを活用してリモートで働く「ノマドワーカー」の誘致に取り組んでいる。「静岡県外や外国の人は、『賀茂』ではなく『伊豆』という広いエリアで見ている。自治体の垣根を越え、活性策を探っていくべき」と提言する。
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