身寄りのない高齢者、転院できず苦慮 身元保証前提の慣習課題 静岡県内救急病院

2025/06/15 09:58 

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 救急医療を担う静岡県内の病院で身寄りのない入院患者の転院先を確保できず苦慮するケースが相次いでいる。身元保証のない患者の支払い能力を懸念し、受け入れを拒む療養型病院や介護施設の対応が背景にある。身寄りのない高齢者や単身世帯が増加する中、医療行為の同意や入院費回収などを含め、家族による身元保証を前提にした慣習の課題が県内の医療・介護現場で浮き彫りになっている。
 「保証人はいるんですか?」。転院・退院手続きを支援する磐田市立総合病院医療ソーシャルワーカー増田由美さんは、転院先を探して別の病院や施設に問い合わせると、こう切り替えされることが珍しくないという。
 ■拒否NGなのに…
 救急車などで病院に運び込まれた患者は1カ月程で退院しリハビリや介護を担う別の施設を探さなければならないが、身寄りがなくて施設費用を支払う保証がない場合、受け入れる施設が少ない。低年金や認知症の高齢者だけでなく脳梗塞などで意思疎通できなくなった中高年が拒否されるケースもある。厚生労働省は通達で受け入れを求めるが、増田さんは「さまざまな理由を付けて拒否されるのが実態」と明かす。
 県内の複数の病院関係者によると、金融機関から必要な金銭を引き出せず入院費が精算できない、死亡時に遺体の引き取り手がいないなどの課題もある。いずれも通常は親族がいれば問題ない作業。緊急入院の場合、着替えや生活用品がなくて病院職員が患者宅に取りに行く病院も。手術など医療行為や治療方針を決める際に訴訟リスクを意識して身寄りを探して同意を得たいと考える医師もいて、親族が見つからないと民生委員に連絡したり、夜中に行政職員やケアマネジャーを呼び出したりした事例もあるという。
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