映画やドラマロケ誘致 静岡県内自治体が本腰 地域活性化へ、ノウハウ共有

2025/06/08 08:31 

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 静岡県内で映画やドラマなどのロケ誘致により、地域活性化を図ろうとする自治体が増えている。東京からのアクセスや自然環境などを利点として制作側からは熱視線が送られ、県も好循環を生み出そうと撮影地を巡りながらその土地の食や文化に触れる「ロケツーリズム」の展開に本腰を入れている。
 県によると、自治体や関係団体など県内約30カ所の実績は年間千件超で推移。新型コロナウイルス禍の2020年度に921件に落ち込んだものの23年度は1307件に回復した。上位の浜松市や伊東市などのほか各地で地域おこし協力隊と連携した活動や官民一体での誘致の動きが活発化しているとして、県観光振興課の担当者は「今後さらに増えるだろう」と見込む。県は24年度に「ロケツーリズムコーディネーター」を配置して地元要望への対応や情報提供に取り組むとともに、ロケ地マップの作成やスタンプラリーなどの企画で経済活性化につなげようとしている。
 「首都圏は撮り尽くした感が出始め、経費縮減や人手不足といった制作側の事情もある。短期間で自然と市街地の両方で撮影できる静岡の魅力が増している」と話すのはロケ地情報誌などを手がける「地域活性プランニング」(東京)の担当者。この波に乗ろうと、同社が事務局の「ロケツーリズム協議会」には県内の6自治体が加盟し、セミナーや制作側とのマッチング大会でノウハウを学んでいる。5月末には、14年のドラマ「ごめんね青春!」のロケ地として話題になった三島市が、再度の誘致を目指して同社と包括連携協定を締結した。
 同協議会に加盟する西伊豆町は、新型コロナ禍の行動制限の間に体制を整え、20年度に32件だったロケ実績が24年度に89件に。町内各所にロケ地マップや看板を設置し観光客にPRしている。「開庁日には必ず撮影の問い合わせがある」と産業振興課の土屋佑斗さん(37)。問い合わせがあれば制作側の要望を丁寧に聞き取り、注意事項や施設使用料のほか、町の広報活動に活用するための権利確認を含めた書面を交わす。台本を読み込み、より良い撮影場所を提案することもあるという。
 情報番組で町の商店が取り上げられた翌日に、その店の商品を返礼品とするふるさと納税の申し込みが約100件あり「露出を増やせば確実に経済効果が生まれる」と実感。最近は13年に閉園した「らんの里堂ケ島」跡地で、「乃木坂46」をはじめとする人気アーティストのミュージックビデオの撮影が絶えず20、30代の旅行者が増えているため、同所の一般公開やロケ地ツアーを検討するという。土屋さんは「高齢化や人口減少といった課題がある中、体制を底上げして町を盛り上げたい」と意気込みを語った。

アニメ旅行 静岡県3位
 観光情報調査機関「じゃらんリサーチセンター」が2024年に公表した調査結果では、テレビアニメに関連して選んだ旅行先は、本県が東京、神奈川に次いで3番目に多かった。特に本県を舞台にしたアニメ「ゆるキャン△」シリーズの人気が根強い。
 県によると、21年11月〜22年3月に県内で実施した同作のデジタルスタンプラリーの経済波及効果は推計4億円。スタンプラリーには1万2千人以上が参加し、宿泊や飲食で約1億6千万円、交通で約8700万円、買い物・土産代で約4700万円の効果があったとされる。県の担当者はこうした好事例を基に「海外でも日本のアニメやドラマが人気。本県の魅力を効果的に発信する策を考えていく」としている。
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