自民、夫婦別姓「反対」の党議拘束は見送り調整 党内の意見集約困難

2025/06/03 21:21 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 選択的夫婦別姓制度を巡り自民党は、今国会で野党3法案を採決する場合、「反対」の党議拘束をかけることを見送る調整に入った。党内意見の隔たりが埋まらず、党議拘束の前提となる党の基本的スタンスすら正式決定する見通しが立たないため。党執行部は、このままでは別姓推進派が野党案に賛成しかねないとみて、野党案の採決先送りを模索するが、野党内には強行採決論もあり状況は予断を許さない。

 自民は別姓制度を巡る党内の意見集約が難航し、独自法案の国会提出を断念。立憲民主、国民民主、日本維新の会の3党がそれぞれ提出した法案が4日の衆院法務委員会で実質審議入りするのを前に、旧姓の単独使用を可能とする見解を盛り込んだ「基本的考え方」を総務会で決定し、野党案に反対する党議拘束をかける案を検討していた。

 だが党内の意見対立は根深く、3日の総務会には推進派、慎重派双方が計9人の「オブザーバー」を派遣。推進派の井出庸生氏が「(『考え方』には)我々の思いが反映されていない」と反発するなどした。結局、総務会では考え方の了承が見送られ、「中間報告」扱いとなった。

 こうした状況を踏まえ、党議拘束の機運もしぼんだ。鈴木俊一総務会長は総務会後の記者会見で、党議拘束について「終盤国会残り20日程度という時点での総務会にかかったが、あえて『説明』を受けたということにとどめた」と述べ、断念を示唆した。

 党議拘束の行方は野党3法案の成否に密接に関わり得る。衆院法務委の委員長を除く委員は34人。自民14▽立憲10▽維新3▽国民民主・公明党各2▽共産党・参政党・日本保守党各1――で、いずれの党派も単独では過半数に届かないが、自民内の推進派が賛成にまわれば可決の可能性が出てくるためだ。委員会可決後、衆院本会議で記名採決となれば、推進派と慎重派の「あぶり出し」(党幹部)となり、夏の参院選に悪影響を与えかねないとの見方も党内にはある。

 自民は「次善の策」として、審議を先延ばしし「継続審議」とすることに躍起だ。だが、立憲内には「自民の一部が賛成することはあり得る。委員会での採決は当然だ」との強硬論もあり、調整は難航している。自民ベテランは「どうやって審議を遅らせるかばっかり考えている」と吐露した。【高橋祐貴、森口沙織】

毎日新聞

政治

政治一覧>

注目の情報