<特派員の目>ロシアの「正しいメディア」とは 研修から見えること=真野森作
「本セミナーの目的は、マスコミ分野での法律違反を防止すること。我が国では伝統的道徳観の維持・強化が国家レベルで積み重ねられてきた。メディアもそれに沿って活動を行わねばならない」
こんな発言で始まったのは、ロシア政府の通信・情報技術・マスコミ監督庁の国内メディア向け研修会だ。2025年12月、モスクワで開かれた。
監督庁職員らによる解説と質疑応答が続いた。具体的には▽「外国の代理人」(事実上のスパイを意味)に指定された人物を報じる際にはその身分の明記が必要なこと▽同性愛などの「非伝統的な性的関係」を助長しないこと――といった内容だ。
メディア側は「どこからがアウトなのか?」と質問を次々投げかけ、この国のマスコミと政府の関係を象徴するような場面だった。
実際、一線を越えたと判断されれば、刑事罰を受ける可能性がある。26年4月には、大手出版社の社長らが捜査当局に一時拘束された。関連会社が21年に出版してベストセラーとなった青春小説を巡る刑事事件の関連だった。
男性同士の同性愛を主題にしたため、「未成年者の健康に有害な非伝統的な性行為を助長している」などと非難された作品だ。
ではプーチン政権にとって模範的なのは、どんなメディアか。国営報道機関ロシア・セボードニャはお手本の筆頭と言えよう。前身は1941年に設立されたソ連情報局で、保守派ジャーナリストのドミトリー・キセリョフ氏がトップを務める。
毎年5月9日の対ドイツ戦勝記念日を前に、ロシア各地でオレンジと黒のストライプのリボンが人々に配られる。「聖ゲオルギーのリボン」と呼ばれ、ロシアでは愛国心や戦勝の象徴とされる。
キセリョフ氏は4月下旬、同社が後援するリボン配布の開始式の記者会見で「(ロシアがウクライナで続ける)特別軍事作戦に従事する我らが戦士たちは、常にこのリボンを身につけている。彼らに勝利への信念を植え付け、大事な支えになる」と語った。
先に紹介した研修会では、こんな説明もあった。「メディアは社会に良い影響も悪い影響も及ぼし得る。特に子どもたちは影響を受けやすい」。その通りだろう。【モスクワ真野森作】
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