イスラエル軍、ガザ市内へ地上侵攻 住民60万人が孤立か

2025/09/16 20:04 

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 パレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘を巡り、イスラエル軍は15日、ガザ北部の最大都市ガザ市に地上部隊を侵攻させた。多数の住民が取り残されており、市街戦による犠牲者の増加や人道危機の悪化は避けられない情勢だ。

 イスラエル軍はすでにガザ市郊外を制圧しており、先週からガザ市内への空爆を強めていた。米ニュースサイト「アクシオス」などによると、15日には市内中心部で空爆を激化させ、続いて戦車部隊が中心部に向けて侵攻した。数日内にさらに数万人の兵士を追加で投入し、作戦を拡大させるという。

 イスラエルのネタニヤフ首相は16日、「ガザ市で集中的な作戦を始めた」と表明。カッツ国防相もX(ツイッター)に「ガザは燃えている」と投稿し、「任務完了まで後退しない」と強調した。

 中東の衛星テレビ「アルジャジーラ」などによると、ガザ市では避難民を含め約100万人が暮らしていた。イスラエル軍は9日に全住民に退避を勧告したが、これまでに市外へ逃れたのは35万人あまりとみられ、軍は約60万人が市内にとどまっているとみている。ガザ市では15日、少なくとも52人が死亡した。

 ガザ市とその周辺では極めて深刻な食料不足が続いており、国連は8月、この地域で「飢饉(ききん)」が発生したと認定していた。地上侵攻によって人道状況は一段と悪化し、餓死者が増える恐れがある。

 ハマスは約50人の人質を拘束中で、このうち約20人が生存しているとみられている。一部はガザ市内で拘束されている可能性もあり、人質の安否に対する懸念も強まっている。

 地上侵攻に先立ち、ネタニヤフ首相は15日、エルサレムでルビオ米国務長官と会談した。ルビオ氏は共同記者会見で、人質の解放に向けて「揺るぎない支援」を表明。ハマスの武装解除については、外交的解決が理想だとしつつも「テロリストがそれを受け入れないことも考慮せねばならない」と指摘し、軍事力の行使も「必要になるかもしれない」と述べた。米CNNによると、ルビオ氏は会談でガザ市制圧を支持する一方、作戦を急ぐよう伝えたという。

 イスラエルはガザ全域の75%を制圧し、人口の約9割が避難を強いられている。ガザ保健当局によると、これまでの戦闘によるガザ側の死者は15日時点で約6万5000人、負傷者は約16万5000人に上っている。【カイロ金子淳、エルサレム松岡大地】

毎日新聞

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