米、アジアの同盟国にも防衛費GDP比5%を要求 NATOに続き

2025/06/21 23:12 

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 米国防総省のパーネル報道官は21日、日本を含むアジアの同盟国が防衛費を国内総生産(GDP)比で5%に引き上げるべきだとの認識を示した。トランプ米政権は同盟国が過度に米国に依存してきたと主張し、防衛費の「応分の負担」を要求。米欧で作る北大西洋条約機構(NATO)ではGDP比5%への引き上げの議論が進んでいるが、アジアでも「5%」を基準とする方針を明確にした。

 日本政府は2025年度予算の防衛費と関連経費の合計額が、22年度のGDP比約1・8%になったとしている。27年度に2%まで増額することを目指しているが、28年度以降の次期防衛力整備計画の策定に向けて、米国から更なる増額を迫られるのは必至だ。

 パーネル報道官は声明で、NATOが24、25日の首脳会議で合意を目指す「GDP比5%」への防衛費引き上げが、米国の同盟国にとって「世界基準」になると強調した。「中国の大幅な軍拡や北朝鮮の核・ミサイル開発を考えれば、アジア太平洋の同盟諸国が欧州の防衛費のペースと水準に急いで追いつくために動くことこそが常識だ」と主張。「よりバランスが取れて公平な負担は米国民の利益でもある」とも説明した。

 防衛費の増額を巡って、コルビー国防次官(政策担当)は今年3月の人事承認のための米議会公聴会で、日本はGDP比3%に増やすべきだと主張。ヘグセス国防長官は5月、オーストラリアに対して、防衛費をGDP比3・5%に早期に増やすよう求めた。

 ただ、今回主張されたGDP比5%は従来の要求より高水準で、世界的に見ても異例の水準だ。米国自身も24年の防衛費はGDP比3・19%(NATOの推定)に過ぎない。NATOも防衛費自体の目標は3・5%にとどめ、防衛に関連するインフラ整備費などの名目でかさ上げすることで「5%」を目指す方向だ。

 ストックホルム国際平和研究所によると、アジアの米国の同盟国も、24年の防衛費のGDP比は、韓国2・56%、オーストラリア1・88%、フィリピン1・32%、タイ1・08%にとどまり、5%はほど遠い。トランプ政権は「5%」を掲げて各国に増額を迫る一方で、交渉によって落としどころを探るとみられる。

 一方、英紙フィナンシャル・タイムズは20日、トランプ政権が日本に防衛費をGDP比3・5%に増額するよう要求したと報じた。

 ただ、日本政府は「防衛費は、米国に限らず他国に言われて決めるものではない」との姿勢を強調している。防衛省関係者は「日米で何%という議論をやっていくのは今後の話だ。日本も努力すべきだという議論にはなるだろうが、議論を詰めるのは時間がかかる」と指摘した。【金寿英(ワシントン)、中村紬葵】

毎日新聞

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