トランプ氏、国家情報長官は「間違っている」 イラン核兵器製造巡り

2025/06/21 17:13 

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 トランプ米大統領は20日、イランの核兵器製造を否定する情報分析を示したギャバード国家情報長官について「間違っている」と主張した。訪問先の東部ニュージャージー州で記者団の質問に答えた。

 トランプ氏は「イランは数週間か数カ月以内に核兵器保有国になるだろう」と語ったが、具体的な根拠は示さなかった。イランへの攻撃について2週間以内に判断するとしているが、誤った情報に基づいて開戦に踏み切った2003年のイラク戦争の「二の舞い」を懸念する声も上がっている。

 米国は03年、イラクのフセイン独裁政権が大量破壊兵器(WMD)を隠し持っていると主張し、侵攻して政権を打倒。しかし、戦後にWMD保有の証拠は見つからなかった。

 トランプ氏は、検討中のイラン攻撃とイラク戦争との違いについて問われると「私はイラクにWMDがあるとは思っていなかったので、最初から明確に反対した」と強調。一方でイランは核兵器製造に必要な「相当量の物質を集めている」と訴えた。

 イランの核兵器開発疑惑を巡っては、米中央情報局(CIA)などの情報機関を統括する国家情報長官のギャバード氏が今年3月の上院公聴会で「イランの高濃縮ウランの保有量は過去最高の水準で、非核兵器保有国としては前例がない」と指摘。一方で「情報機関はイランが核兵器を製造していないと判断している。最高指導者ハメネイ師は03年に凍結した核兵器計画の再開を承認していない」と証言していた。

 トランプ氏の発言後、ギャバード氏はX(ツイッター)に「米国は『イランが最終的な組み立てを決断すれば、数週間から数カ月以内に核兵器を製造できる段階にある』との情報を得ている」と投稿し、トランプ氏に歩調を合わせた。

 トランプ氏はギャバード氏が今月10日にXに投稿した核廃絶を訴える動画に不快感を抱いたとされ、17日にギャバード氏との見解の違いについて記者団に問われた際も「彼女の言うことはどうでもいい。イランの核兵器保有は近いと思う」と答えるなどして距離を置いていた。

 一方でイランの核兵器保有が近いという十分な証拠のないまま攻撃に踏み切って報復を招けば、戦況が泥沼化したイラク戦争の二の舞いになりかねない。イラン攻撃を実施した場合に地上軍を投入する可能性について問われたトランプ氏は「地上軍については話さない。それは最後の手段だ」とのみ答えた。【ワシントン金寿英】

毎日新聞

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