イラン外相、ウラン濃縮放棄「不可能」 米の要求拒み強硬姿勢崩さず

2025/06/21 20:43 

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 イスラエルとイランは21日も攻撃の応酬を続けた。イランのアラグチ外相は米メディアに対し、米国が求めるウラン濃縮活動の放棄は「不可能だ」と強調。トランプ米大統領はイスラエルに攻撃をやめるよう促すことは「非常に難しい」と述べた。トランプ氏は、米国もイラン攻撃に踏み切る構えを見せて譲歩するよう圧力をかけているが、イランも強硬姿勢を変えておらず、イランの核開発制限を巡る交渉は難航必至だ。

 アラグチ氏は20日、スイスで、英仏独、欧州連合(EU)との外相会談に臨んだ。ラミー英外相は会談後、英BBCに「イランのウラン濃縮活動放棄が(交渉の)出発点だと明確に伝えた」と述べた。ラミー氏は事前にルビオ米国務長官やウィットコフ米中東担当特使と折衝しており、米国の要求をイランに伝えた形だ。

 だが、アラグチ氏は会談後の米NBCニュースのインタビューで「ウラン濃縮を完全にやめるのは不可能だ。米国のウィットコフ氏に何度も伝えている」と述べた。2015年にイランの核開発制限と引き換えに米欧などが制裁緩和で合意(米国は18年に離脱)した際も、イランは濃縮度3・67%以下のウラン製造を容認された経緯がある。

 米欧には、イランが合意に違反して濃縮度を上げ、核兵器に転用可能なレベルに達しようとしているとの警戒感があり、今回は「濃縮放棄」を求めているが、アラグチ氏は「(ウラン濃縮技術は)イランの科学者たちの成果だ。国家の誇りの問題だ」と強調した。

 米ニュースサイト「アクシオス」によると、アラグチ氏は23日にロシアを訪問し、停戦仲介に意欲を見せるプーチン露大統領と会談する。

 また、マクロン仏大統領は21日、イランのペゼシュキアン大統領と電話で協議したと明かした。マクロン氏はX(ツイッター)への投稿で、核開発が平和目的だと証明する責任はイランにあると強調。イランとの交渉を加速させると述べた。

 一方、トランプ氏は20日、戦況について「イスラエルは順調で、イランはそれほどうまくいっていない」と主張した。イランとの交渉も模索しており、攻撃の可否を判断する期限は「2週間が最大だ」と話した。

 20日には国連安全保障理事会でも今回の交戦を巡る公開会合が開かれた。国連のグテレス事務総長は戦闘停止と交渉路線への回帰を促した。イランは米国の威嚇は「国際法違反だ」とけん制。イスラエルは一連の攻撃がイランの核兵器保有の脅威を排除する「最後の手段だ」と訴えた。

 イスラエル軍は21日、イラン中部イスファハンの核施設を攻撃した。国際原子力機関によると、13日以降の攻撃で、イラン中部ナタンツのウラン濃縮施設▽イスファハンのウラン転換施設▽首都テヘランや近郊の研究施設▽西部アラクの重水炉――などが被害を受けた。

 当局や人権団体の推計では、13日以降の戦闘による死者はイスラエルが24人、イランが少なくとも722人に上っている。【ロンドン福永方人、ワシントン松井聡、ニューヨーク八田浩輔、カイロ金子淳】

毎日新聞

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