米の和平「最終提案」 露の占領地割譲とクリミア統治を容認 米報道

2025/04/23 23:14 

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 米国、ウクライナ、英国、フランスは23日、ロンドンで政府高官による会合を開き、ロシアの侵攻を受けるウクライナの停戦に向け、具体策を協議する。露側占領地域を「ロシア領」として認めるといった米国の和平案などを議論する。ウクライナにとっては厳しい内容で、正念場となる。

 ロシアは2014年3月にウクライナ南部クリミア半島を一方的に併合し、全面侵攻後の22年9月には東部のドネツク、ルハンスク、南部のザポリージャ、ヘルソンの計4州の自国領編入も宣言した。4州では広大なエリアを占領しているが、全域には及んでいない。

 米ニュースサイト「アクシオス」の22日の報道によると、米国の和平案は「最終提案」とされ、ロシアによるクリミア半島統治を米政府が法的に承認▽4州における露側占領地域の事実上の承認▽ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)加盟を断念▽停戦後のウクライナの安全の保証▽欧州の平和維持部隊の受け入れ――などの内容という。

 他に、ロシアはウクライナの欧州連合(EU)加盟を認める▽南部ザポリージャ原発を米国が管理し、ウクライナ、ロシア両国に送電▽対露経済制裁の停止▽ウクライナの復興支援――といった項目も含まれる。

 ウクライナ側は、一貫して求めてきた安全の保証の内容があいまいになっていることなどから、この米国案を「ロシア寄り」とみており、ロンドンの会合では、30日間の一時停戦の協議に重点を置く可能性があるという。米国は、全面停戦に向けた交渉が進まない場合、仲介から手を引く可能性を示唆し、ウクライナ側に圧力をかけている。

 一方、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は22日、プーチン露大統領が現在の前線で戦闘を停止し、これまで要求してきた4州の全面割譲などを巡り、米国に条件次第で一部妥協する可能性があることを示したと報じた。

 FTによると、プーチン氏は今月11日、米政府で露側との交渉を担当するウィットコフ中東担当特使と露北西部サンクトペテルブルクで会談した際、4州の全面割譲の要求を取り下げる用意があることを示唆した。米国の和平案が実現した場合などに、割譲範囲を現在の占領地域に限定し、戦闘を停止するといった可能性があるという。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は22日、記者団に「停戦が実現した場合、プーチン氏と直接協議する用意がある」と首脳会談に意欲を示した。ただ、「米国から正式な提案は受けていない」とし、「クリミア半島の割譲は認めない。ウクライナの憲法に違反し、議論の余地もない」と述べた。この際には、4州に言及していない。

 FTによると、ロンドンの会合で米国は、停戦後に欧州側が平和維持部隊とは別に、停戦監視部隊を前線付近の非武装地帯に派遣する案を提示するとみられる。ウクライナの複数の政府高官は同紙に「(非公式で提示された)米国の提案の中には、受け入れ可能なものがある」と語った。

 会合には、米国のケロッグ・ウクライナ担当特使やウクライナのイエルマーク大統領府長官らが出席する。ルビオ米国務長官は出席を取りやめた。ウィットコフ氏も会合に参加せず、今週後半に訪露してプーチン氏と会談するとみられる。

 また、欧州外交筋によると、26日にバチカンで予定されるフランシスコ・ローマ教皇の葬儀に合わせ、参列するトランプ米大統領とゼレンスキー氏、欧州首脳らによる停戦に向けた会合が開かれる可能性がある。【ブリュッセル宮川裕章】

毎日新聞

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