半導体も自動車も…九州各地で操業取りやめ相次ぐ 熊本地震
28日に熊本県で震度7を観測した地震で、県内を中心に九州各地の生産拠点で操業取りやめが相次いでいる。特に九州の主力である半導体や自動車産業の工場での稼働停止が長引けば、日本経済全体への悪影響も懸念される。
◇TSMCは設備への影響調査
半導体受託製造で世界最大手「台湾積体電路製造」(TSMC)の熊本第1工場(熊本県菊陽町)では目立った建物の被害はなく、検査で構造上の安全性を確認。従業員も無事だった。
ただ最先端の半導体は線の幅が10億分の1メートルレベルの微細加工をするため、生産前に入念な装置の設定が必要だ。地震で設定に狂いが生じ、復旧に時間を要することが多い。
TSMCは工場内の設備などへの地震の影響を詳しく調べているが、広報担当者は稼働状況などについて「現時点で申し上げられる確定情報はない」と具体的な回答を避けた。
一方で「設備に何らかの影響があり、復旧に一定の期間がかかる」とみる業界関係者もいる。
ソニーでは半導体グループ会社の工場(熊本県菊陽町)の操業を停止し、復旧時期は見通せていない。画像センサーなどを製造しており、2016年の地震でクリーンルームが崩れるなど、大きな被害を受け、生産再開まで約3カ月半かかった。
三菱電機も合志市と菊池市にパワー半導体の工場がある。建物の損傷は確認していないが、生産再開のめどは立っていない。16年の地震では合志市の工場の設備に被害が出て、生産を約1カ月半停止した。
ルネサスエレクトロニクスも熊本県内の川尻工場(熊本市)と錦工場(錦町)の2生産拠点で一部損傷があり操業を停止している。
◇トヨタ、再開後に操業見合わせ
九州にはトヨタ自動車、日産自動車、ダイハツ工業の工場があり、年間計124万台(25年)を生産する。下請け企業は1000社を超え、サプライチェーン(供給網)への影響が懸念されている。
熊本県大津町で二輪車を製造するホンダ熊本製作所では、28日の発災後から一部で漏水や浸水があったため稼働を停止。余震警戒や取引先の被害状況把握が続いていることなども踏まえ、8月1日からの稼働開始を目指す。
トヨタなどの工場は地震が発生した熊本県からは離れており、建物は大きな被害を免れたものの、生産をストップする工場が相次いだ。
トヨタは地震発生後、高級ブランド「レクサス」などを生産する福岡県内3カ所の工場の稼働を停止した。建物や設備に問題がなかったため、29日朝にいったん再開した。しかし、同日午後には再び3工場ともストップし、31日まで操業を見合わせることになった。その理由を「安全や物流、仕入れ先の状況を考慮」と説明する。
特に仕入れ先は下請け、孫請けと多くの会社が連なり、熊本県内で部品や材料の供給元が大きな被害を受けた可能性がある。29日朝までは保有する在庫で稼働できたが、「仕入れ先や道路状況の確認ができないまま工場は動かせない」(担当者)として、再び稼働停止を余儀なくされた。
トヨタ九州に部品を納める熊本県内のメーカーは、地震で工場内の配管が破損し、30日から段階的に生産を再開できる見通しという。こうした供給元の被害が大きくなれば、生産停止の期間が長引く可能性もある。
ダイハツも29日夜から30日朝にかけて、大分県内と福岡県内の2工場を31日まで停止する。担当者は「仕入れ先に問題がないか確認に時間がかかっている」という。日産自動車九州は30日から31日まで、福岡県内の工場のラインの一部を止める。「一部の車種の部品の供給元が被災し、調達が間に合わなくなった」(幹部)と話す。
◇物流にも大きな影響
ビールや清涼飲料を製造するサントリー九州熊本工場(熊本県嘉島町)では、現時点で出荷停止と遅延が発生している。長期化する恐れがあるため県外の自社工場や委託工場で製造振り替えを検討中という。
物流も大きな影響を受けている。日本郵便は当面、熊本県宛てと県内での「ゆうパック」の引き受けを停止した。復旧見通しは不明という。また29日は県内全ての郵便局の窓口業務を休止した。
ヤマト運輸は熊本県全域で集荷・配送停止している。佐川急便は宇城市など同県の一部、日本通運は同市などを除く県内の一部で同じ状況という。
九州経済調査協会(福岡市)の片山礼二郎・情報研究部長は「道路の一部寸断による物流の混乱や、従業員の自宅などの被災状況も工場の稼働に悪影響を及ぼしかねない。停止が長引けば、半導体や自動車産業で日本経済をけん引しているとも言える九州経済の発展に痛手となる恐れがある」と話す。【宇都宮裕一、中園敦二、土屋渓、田中韻、池田一生、渡辺暢、中島昭浩】
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