車社会なのに…群馬でガソリンスタンドの廃業進む ゼロの自治体も

2025/05/24 12:30 

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 車社会の群馬県で、ガソリンスタンド(GS)の減少が止まらない。群馬経済研究所によると、GSの数は2014年からの10年で3割減となり、減少率は全国で最も大きかった。2月には高山村で唯一だったGSが廃業し、県内で初めてGSゼロの自治体が現れた。【山越峰一郎】

 同研究所によると、2014年3月時点で県内808カ所にあったGSは、10年で563カ所にまで減少。県内でGSが1カ所しかない自治体は、上野村、南牧村、明和町の3町村。高山村は2月でゼロになった。

 同研究所によると、ガソリン需要は人口減少やハイブリッド車などの普及を背景に、全国的に減少傾向。さらに、11年の消防法改正で40年を超えて老朽化した地下タンクへの高精度センサー設置が義務づけられ、数百万円とも言われる費用を捻出できず、廃業するGSが続出した。

 とりわけ県内では、小規模事業者が大手との競争に耐えきれず、廃業が進んだと分析。高山村のGSも、施設の老朽化が進むなどして廃業を決めたとみられる。

 「専業農家が困っている」。高山村の桑原松雄さん(78)はGS閉鎖の影響を語る。トラクターなどの燃料である軽油がなくなると、以前は直接GSへ乗り付けて給油できたが「今は前もってポリタンクに用意する。なければ機械をそのままにして軽油の買い出しに行くので、作業を中断しなければいけない」という。

 一方で「仕方ない」との声もあった。村は村民に対してアンケートを実施。「巨額投資をして運営継続は必要ですか」との質問に「必要」は29%、「必要でない」は44%、残り26%は「わからない」だった。

 廃業したGSは、隣の中之条町のGSまで国道で10分ほどの距離。渋川市の市街地へも約30分で行ける。村民アンケートで「運営を継続した場合、給油所は変わりますか」と尋ねると、村の給油所を「利用する」と回答した人は26%にとどまった。

 80代の村民の男性は「いつもスタッフが数人いたためか、前橋のセルフ店と比べて1リットルあたり10円近く高く、これまでも会社員など若い人は村外の職場近くで給油していた」と内情を語った。

 ただ、同研究所は「県内において、住民のインフラ喪失は深刻な問題」と指摘。下仁田町が18年、GS維持へ防災拠点化する自主行動計画を立てた例はあるが「まだ実効性が見えてこない」という。

毎日新聞

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