最大10点差でも…京都国際の「雑草軍団」に咲いた花 夏の甲子園

2025/08/23 09:15 

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 夏の甲子園で、京都国際は2年連続となるベスト8進出を果たした。リードされても追いつき、追い越すしぶとさを見せ、終盤まで目の離せない試合展開で連覇も期待させた。今大会の戦いぶりを振り返り、「粘り強さ」の源泉を探った。

 19日の準々決勝・山梨学院戦。先制するも、直後に5点を奪われ、最大10点差がついた。

 ワンサイドゲームか、と思われたが、一塁側のアルプススタンドは一丸となっていた。メンバー外の選手たちが中心となり、打席に入った仲間の名前を大声で叫び続けていた。

 すると、八回に1点、九回にも2点を返した。得点が入るたび、アルプスでは「オー・シャンゼリゼ」の合唱がわき起こった。

 栄光と挫折を何度と繰り返そうと――。最終回、京都国際のチャンステーマでもあるオリックスの応援歌「バファエール」が演奏された。昨年の栄光からは一転、今年のチームはここまで挫折を繰り返してきた。

 始動となった昨秋の府大会はベスト16で敗退。再起をかけて臨んだ今春の府大会でも16強で敗れた。全国王者の重圧もあり、結果が出ない時期が続いた。

 そして始まった今夏の京都大会。4回戦では今春の京都王者、京都共栄に、延長タイブレークでリードを奪われる苦しい展開ながら競り勝った。決勝では終盤に追いついてサヨナラ勝ちし、2年連続での聖地への切符をもぎ取った。

 3日にあった甲子園での組み合わせ抽選後、初戦が全国屈指の投手陣を擁する優勝候補、健大高崎(群馬)に決まると、小牧憲継監督は相手を「スター軍団」、今年のチームを「雑草軍団」と評した。倉橋翔主将(3年)も「チャレンジャーとして挑みたい」と少し不安げに話していた。

 しかし試合が始まれば、1回に先頭の長谷川颯(同)が初球をはじき返し、好機で4番・清水詩太(うた)(同)がまたも初球でスクイズを決めた。逆転されても、山口櫻太(同)、猪股琉冴(同)の連続適時打でひっくり返した。

 次戦の尽誠学園(香川)戦は終盤の八回、小川礼斗(らいと)(2年)の逆転打で劇的勝利。甲子園初先発の酒谷佳紀(3年)が試合を作り、引き継いだエースの西村一毅(同)の好投が流れを引き寄せた。

 大会前、倉橋主将に聞いたことがあった。「逆境での強さは、どうやって培われてきたものなのか」と。倉橋主将は、普段の練習や練習試合から、体力的、精神的にもしんどくなる終盤を想定していると話した。そして、「しんどいからこそ全力で声を出す、最初から最後まで気持ちのムラなくやり通すことを意識しているので、どんな状況でも自分たちのペースでやれる」とメンタル面の強さの秘密を説明した。

 小牧監督にも甲子園での初戦の後、同じことを聞いた。小牧監督は「やっぱり、やるべきことをしっかりやりこんでいるっていう自信じゃないですかね。練習量だけは取り柄(え)です」と答えた。

 さらに京都国際ならではの特徴も挙げた。「アドレナリンが出るというか、ああいう舞台でひるんでしまう選手も多いと思うんですけど、うちの子たちは『よっしゃ、見せつけてやるぞ!』っていう、いいスイッチが入るんでしょうね」

 準々決勝では、終盤に1、2年生も途中出場した。七回に代打で安打を放った大嶋健生、九回に適時二塁打を放った藤本統守、適時打で生還した藤本玄岐はいずれも1年生。深紅の優勝旗を取り戻すことはできなかったが、大舞台を経験し、来年以降につながる道筋をつくった。

 小牧監督は敗退後、最終回の粘りを「1年間の成長」と表現した。京都国際が聖地で存在感を放ったのは、勝ち続けたチームではなく、昨秋と今春に負けた経験があるからこそ、逆境や終盤に強かったといえる。

 「雑草軍団」と小牧監督は例えたが、負けている時でも、身に付けた「自分たちならやれる」という本物の自信から、その言葉通りにやってやろうという強い気持ちをプレーに出せるチームだった。

 未来と繋(つな)ぐ標(みち)となれ――。「バファエール」は最後こう締めくくられる。今年のチームの集大成を道標に進む先が、楽しみでしかない。【資野亮太】

毎日新聞

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