ダウン症の当事者やラミレスさん インクルーシブ教育の実現訴え

2026/03/22 19:55 

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 国連が定めた「世界ダウン症の日」(3月21日)に合わせ、ダウン症の当事者や家族ら有志が19、20両日に障害の有無にかかわらず共に学ぶインクルーシブ教育の実現に向けた活動を実施した。

 ダウン症のタレントとして活動するあべけん太さん(38)と、兄で元プロボクサーの安部俊和さん(44)らは19日、インクルーシブ教育に関する提言書を文部科学省に提出した。けん太さんは「誰にでも無限の可能性がある」と強調し、俊和さんは国がインクルーシブ教育をより実効性のある形で実現するよう求めた。

 けん太さんらは2025年12月、ダウン症の当事者やその家族らと米ハワイを訪れ、インクルーシブ教育を推進するホノルル市のクイーン・カアフマヌ小学校とカラニ高校を見学した。

 両校では通常学級での共同学習をベースに、スペシャルニーズ(要特別支援)のクラスがあり、選択できるようになっていた。学習面で困難がある場合は教員や補助教員らのサポートを受け、それぞれのペースや目標に応じて学んでいた。

 米国では1990年、障害者への差別禁止をうたった「障害者差別禁止法」(ADA)が成立した。また、障害者教育法(IDEA)の下、障害のある子どもを対象にした個別教育計画(IEP)が制度化されている。カアフマヌ小のコーディネーター、タラ・タナカさんは「学校やクラスに障害のある子がいることは当たり前。それが大切なのです」と説いた。

 提言書はそうした実例と、ツアーに参加した保護者らの感想や意見を取り入れて作成した。柱は、通常の学級の児童生徒との共同学習や交流の制度的拡充▽個別の支援を担う教員らを増やして人員配置を強化する▽障害のある子どもたちの教育に関する教師らの知識や専門性の向上――など。受け取った福田かおる政務官は「貴重な提言をいただいた。今年は学習指導要領の改定があるので、生かしていきたい」と述べた。

 翌20日には提言に関する発表会が東京都新宿区で開かれた。共にハワイを訪問した元プロ野球選手のアレックス・ラミレスさん(51)と妻の美保さん、ダウン症のある息子の剣侍(けんじ)さん(10)も出席した。

 ラミレスさんは「私が見学した(小学校の)クラスには、4人のスペシャルニーズの子どもがいてそれぞれクラスに溶け込んでいる感じだった。一緒に勉強したり遊んだりする一体感が日本の小学校にもっとあればいい」と報告した。

 剣侍さんは日本の公立小の特別支援学級に在籍し、4月に5年生になる。美保さんは「1年の時は何教科かは一緒に授業を受けた。4年生では(共同学習は)音楽だけになり、成長と共に教育が分離されていく」と言い、「子どもたちが過ごしやすい未来をつくっていきたい」と力を込めた。

 同じくハワイを訪ねたダウン症の俳優、吉田葵さん(19)も家族と登壇した。母の佐知子さんは、米国のIEPに触れ「ホノルルの小学校では、教師や親だけでなく作業療法士や心理師など専門性のある人がチームを組んで一人の子どもを支え、計画を立てていた」と話した。

 日本でも障害のある子どもに対して個別の教育支援計画の作成が義務付けられているが、佐知子さんは「それがどのように活用されたのか、計画に対して結果がどうだったのかがよく分からなかった」と振り返る。

 俊和さんは「制度はあっても、日本は学校や教師によって差があるのではないか。けん太はこれまでダウン症への理解を広げる啓発に力を入れてきた。今回の提言を機にインクルーシブ教育の発展にも寄与する活動をしていきたい」と語っていた。【明珍美紀】

毎日新聞

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