「世界の不条理」鳴り響く爆発音とアラート 中東脱出まで緊迫の日々
米国とイスラエルによるイラン攻撃が始まってから1週間あまり。中東に足止めされていた邦人らは、政府のチャーター機や民間の航空機で退避を始めた。爆発音や緊急アラートが鳴り響く中、自力での帰国を選択した人たちが取材に応じ、中東諸国から脱出するまでの緊迫の日々を語った。
◇とにかく東へ
イランへの軍事攻撃が始まった翌3月1日未明だった。アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで、現地のインフラ系企業に勤める30代男性のスマートフォンがけたたましく鳴り響いた。ミサイル攻撃の危険性を伝える、政府からのアラートだった。遠くで「ドカン!」という爆発音が響いた。
穏やかな日常は、突然終わりを告げた。毎日のように爆撃が続き、近くで暮らす米国人に対して本国から退避勧告が出た。男性が暮らしていた、海に近い「マリーナエリア」でもミサイルを迎撃する音が頻繁に聞こえるようになり、自宅からは空に飛び散る火花が見えた。
日本への帰国を決めたのは4日夜。まだ邦人退避のための政府チャーター機が飛ぶことは発表されていなかった。最低限の衣類とパソコンを詰め込んで、日本行きの飛行機を探した。とにかく東へ。なんとか取れた成田便はすぐにキャンセルになってしまったが、台湾へ向かう便が予約できた。
5日早朝、妻と幼い子どもを連れてドバイ国際空港を飛び立った。攻撃があるかもしれないと、離陸後も気が気ではなかった。安心できたのは、オマーン上空を通過し、アラビア海へと抜けた時だったという。
現在は東京都内の実家に身を寄せ、在宅ワークを続ける。ただ、いつ勤め先からドバイに戻るよう指示があるかわからない状況だ。「ドバイに戻る心づもりに自分自身がなれるかどうか……。先が見えないですね」と不安を吐露する。
◇飛び散る破片、恐怖身近に
埼玉県所沢市の会社経営、竹村敏耶さん(41)は出張でUAEを訪れ、米国などによる攻撃が始まった2月28日は首都アブダビにいた。顧客に紹介するための不動産を下見していた時、約40キロ離れた場所で迎撃時の破片で1人が死亡したというニュースが飛び込んできた。
「え?この辺も爆撃されるの?」
日本での生活では経験したことのない恐怖心が迫ってきた。本来は3月2日に帰国予定だったが、攻撃の影響で予約していた飛行機がキャンセルに。空港は一時閉鎖され、欠航が続いた。
飛行機のチケット代も高騰し、竹村さんが予約しようと思った羽田便は片道で約70万円、ファーストクラスは170万円に。「さすがに買えない」と、フィリピンの首都マニラ行きの航空券を購入した。それでもチケット代は20万円だった。
日本政府がチャーター機を手配することを知り、オマーン行きのバスにも申し込んだ。ただ、バスの出発は数日後の7日。町中で危険な目に遭うことはなかったが、空襲警報が鳴り、ミサイルの着弾音が聞こえた。行き交う人も日に日に減っていった。
「嵐の前の静けさのようで不気味だった。とにかく中東から早く脱出したかった」
バスをキャンセルし、6日発のマニラ行きに乗り込んだ。日本に帰国したのは7日午後8時ごろ。竹村さんは「中東には初めて行ったが、まさかこんなことが起こるなんて……。早く平和な状態に戻ってほしい」と話した。
◇乳幼児を抱えながら
日系企業の社員でドバイに駐在する30代男性は、1月に生まれたばかりの子どものパスポートが取れておらず、国際便に乗ることができない状態だった。領事館のサポートで帰国のための「渡航書」は発行してもらったが、政府チャーター機が出発する隣国オマーンにはパスポートがないため入国できない。
自宅からは遠くの爆発音が聞こえ、アラートは毎日のように鳴り響く。「特に夜中にアラートが鳴ると怖いし、子どもも起きてしまう」。自力での退避を決め、8日発成田行きの便でどうにか帰国することができた。
男性は言う。「めちゃくちゃな理由で戦争が始まる世界の不条理を目の当たりにした。ガザの時からそうだが、民間人が犠牲になる事例が多すぎるのではないか」。事態が収束する見通しは立っていない。【巽賢司、西本紗保美、垂水友里香、洪玟香】
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